『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』(Star Wars: Episode IV A New Hope)は、当初『スター・ウォーズ』(Star Wars)というタイトルで公開されたジョージ・ルーカス監督による1977年のサイエンス・ファンタジー映画である。特撮映画の旗手であり、歴代で最も成功した映画の1つで、同時に、世間に絶大な影響を与えた作品とされている。この映画はアメリカ議会図書館によってアメリカ国立フィルム登録簿に保存されるべき作品に選ばれた。本作は登録簿がスタートした最初の年である1989年に選定された。
この作品は最初の『スター・ウォーズ』映画であり、オリジナル・トリロジー(旧3部作)の第1章、スター・ウォーズ シリーズの出発点である。
この映画は銀河帝国の創設から約19年後、惑星を破壊する力を持つ究極兵器デス・スターが完成したころを舞台にしている。反乱同盟軍の指導者の1人、プリンセス・レイア・オーガナは究極兵器の弱点を探るためデス・スター設計図を入手するが、ダース・ヴェイダーに捕まってこの要塞に連行されてしまう。その頃、砂漠の惑星タトゥイーンで、ルーク・スカイウォーカーという名の若き水分農夫が長年にわたって隠遁生活を送っていたジェダイ・マスター・オビ=ワン・ケノービと出会う。帝国の攻撃で叔母と叔父を失ったルークは、オビ=ワンに従ってジェダイの訓練を開始する。帝国からプリンセスを救出すべく、ふたりは密輸業者ハン・ソロ、ウーキーのチューバッカ、C-3PO、R2-D2たちと共に砂漠の惑星を発つ。
ジョージ・ルーカスは連続活劇『フラッシュ・ゴードン』や黒澤明の時代劇、ジョゼフ・キャンベルの『千の顔を持つ英雄』やフランク・ハーバートの『デューン』シリーズといった名作に触発され、1974年から『スター・ウォーズ』に着手した。1千100万USドルの予算で製作された本作は、1977年5月25日に公開されると、最初の公開期間のうちにアメリカ合衆国で2億5千万ドル、世界で3億3千700万ドルを売り上げる史上最大級のヒット作のひとつとなった。同時にアカデミー賞10部門ノミネートなど様々な映画賞を受賞した。本作は複数回にわたって再リリースされ、大幅な修正が加えられることもあった。特に大きな修正は1997年の特別篇と2004年のDVD版で、CGI修正や新しいシーンが加えられた。2011年9月にはBlu-ray版が発売された。
オープニング・クロール
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概要
タナヴィーIV襲撃
銀河帝国の誕生から約19年後、銀河系は内戦状態にあった。銀河帝国に反旗を翻した反乱同盟軍は、究極兵器デス・スターの極秘設計図を奪取することによって、この戦争で最初の大勝利を収めた。デス・スター設計図を受け取ったプリンセス・レイア・オーガナは、銀河に再び自由を取り戻すため、宇宙船<タナヴィーIV>に乗って故郷の惑星オルデランへ急いだ。しかし、彼女の船は砂漠の惑星タトゥイーンの上空で帝国軍のインペリアル級スター・デストロイヤー<デヴァステイター>に捕まってしまう。
帝国のストームトルーパーが<タナヴィーIV>に乗り込み、船を守る反乱軍兵士を制圧した後、シス卿ダース・ヴェイダーが戦況の確認に現れた。ヴェイダーは設計図のありかを聞き出すためアンティリーズ船長を尋問し、首を絞めて殺してしまう。その直後、プリンセス・レイアは船内に身を潜めていたところをストームトルーパーに発見される。トルーパーたちはスタン・ビームで彼女を気絶させ、ヴェイダーのもとに連行した。ところが、レイアは捕まる前に設計図とホログラムのメッセージをドロイドのR2-D2に託し、タトゥイーンで隠遁生活を送るジェダイ・マスターに届けるよう命じていた。船内に設計図が無いことを確認したヴェイダーは、<タナヴィーIV>を破壊して偽の遭難信号を帝国元老院に送るよう部下に命じた。一方、R2-D2とC-3POの乗る脱出ポッドは眼下の惑星タトゥイーンに向かって進んでいた。
ルークの運命
- 「すべてを失ってしまった。フォースを学んで父のようなジェダイの騎士になります」
- ―ルーク・スカイウォーカー[出典]
砂漠の住民ジャワ族に捕まるというトラブルを経て、2体のドロイドは水分農夫オーウェン・ラーズとその甥ルーク・スカイウォーカーのもとにたどり着いた。しかしR2-D2はオビ=ワン・ケノービこそ自分の主人だと主張し、レイアのメッセージを届けるためラーズ農場から逃げ出してしまった。翌日、ルークとC-3POはジャンドランド荒野でR2を見つけたが、野蛮なサンド・ピープルの部族に襲われた。ルークと2体のドロイドは駆け付けたオビ=ワン・ケノービ(ルークの知る名では“ベン・ケノービ”)に救出され、老人が隠遁生活を送る家へと案内された。
オビ=ワンはルークの父親であるアナキン・スカイウォーカーがかつてジェダイ・ナイトだったことを明かし、ルークに父親のライトセーバーを与えた。オビ=ワンによると、アナキンはダース・ヴェイダーという名のジェダイに裏切られ、命を落としたのだという。レイアのメッセージを見たオビ=ワンは、ルークをオルデランへの旅に誘った。初めは拒否していたルークだったが、叔父と叔母が帝国軍の残忍な攻撃で殺されたことを知ると、故郷を離れる決意を固めた。ルーク、オビ=ワン、2体のドロイドはモス・アイズリー宇宙港を訪れ、オルデランまでの運び屋を探した。
ルークとオビ=ワンはモス・アイズリー・カンティーナで密輸業者ハン・ソロ、ウーキーのチューバッカと出会い、前払いの2,000銀河クレジット標準通貨を含む計17,000クレジットの報酬で2人を雇った。賞金稼ぎのグリードを殺した後、ハンは犯罪王ジャバ・ザ・ハットに借金返済を約束し、自慢の宇宙船<ミレニアム・ファルコン>に乗客を乗せた。出発時、一行は帝国軍とちょっとしたトラブルになったが、ストームトルーパーやスター・デストロイヤーの追跡を振り切り、オルデラン星系へ針路を取ってハイパースペースに飛び込んだ。
レイアの救出
- 「面白くなってきたぞ!」
- ―ハン・ソロ[出典]
オルデランがあるはずの座標に到着した<ミレニアム・ファルコン>は、思いがけず小惑星帯に出くわした。デス・スターの司令官を務めるグランドモフ・ウィルハフ・ターキンの命令により、オルデランは帝国に逆らう者たちへの見せしめとしてスーパーレーザーの餌食にされていたのである。タイミング悪くそこへ姿を現してしまった<ファルコン>はデス・スターの牽引ビームに捕捉され、巨大バトル・ステーションの内部へと引き寄せられた。一行は密輸品用の仕切りに身を隠して帝国のスキャンを逃れ、ストームトルーパーを待ち伏せした。
ハンとルークは奪った装甲服を着てストームトルーパーに変装し、ドッキング・ベイの司令センターを襲撃した。オビ=ワンが1人で牽引ビームの制御装置へ向かった後、R2-D2が帝国のネットワークにアクセスし、プリンセス・レイアが基地内に監禁されていることを突き止める。ルークはプリンセスの救出を決意し、ハンとチューバッカの力を借りるため報酬金の話をでっちあげた。C-3POとR2-D2を司令センターに残し、ルークとハンはチューバッカを護送するふりをしながら監房ブロックAA-23を目指した。彼らは監房の見張りを倒してプリンセスを解放したが、誰も逃走時の計画を立てておらず、トルーパーに出口を塞がれてしまう。呆れたレイアは近くにあった格子にブラスターで穴を空け、逃げ道を作った。
不幸にも、プリンセスたちが飛び込んだシャフトはダイアノーガが潜むゴミ圧縮機につながっていた。ルークはダイアノーガによって悪臭を放つ汚水の中に引き込まれ、危うく命を落としかける。ルークは両側から迫りくるゴミ圧縮装置の壁を停止させるためC-3POに連絡を取り、圧縮機の電源を切るよう必死で呼びかけた。R2-D2はすんでのところでシャットダウンに成功するが、C-3POはコムリンク越しに聞こえるルークたちのくぐもった歓声を断末魔と勘違いした。ゴミ圧縮機から脱出した一行は、オビ=ワンが牽引ビームを切ってくれていると信じ、<ミレニアム・ファルコン>のある格納庫へ急いだ。
犠牲と勝利
- 「今日は記念すべき日ですな。オビ=ワン・ケノービも今はなく、同盟軍もまもなく壊滅する」
- ―ダース・ヴェイダー[出典]
その頃、オビ=ワンはダース・ヴェイダーと宿命の再会を果たしていた。かつての弟子との短い対決の末、ルークたちが格納庫に戻って来たのを見たオビ=ワンは、防御の姿勢を解いて自らを犠牲にした。ヴェイダーのライトセーバーに切り裂かれたオビ=ワンはフォースと一体化し、死体は消滅してローブだけがその場に残った。ルークは怒りに駆られてストームトルーパーと撃ち合ったが、どこからともなく聞こえてきたオビ=ワンの声に従い、<ファルコン>に乗り込んだ。<ファルコン>はTIEファイター部隊との戦闘を経てヤヴィン4で反乱同盟軍と合流する。R2-D2がもたらしたデス・スター設計図を解析したジャン・ドドンナ将軍は、反乱軍パイロットたちが驚くほど大胆な攻撃作戦を考案した。反乱軍が決戦に備える中、ハンは報酬を受け取って基地から去ってしまい、一緒に戦ってくれると信じていたルークを失望させる。
デス・スターがヤヴィン星系に出現すると、反乱軍のスターファイター部隊はバトル・ステーション破壊作戦を開始する。デス・スターがヤヴィン4を攻撃可能な位置へ迫りくる中、パイロットたちはステーションの子午線トレンチへ飛び込み、排熱孔への攻撃を試みた。固定砲台やTIEファイターからの銃撃が入り乱れる激しい戦いの中で、ルークの友人ビッグズ・ダークライターを含む多くの反乱軍パイロットが命を落としていった。最後の生存者となったルークたちもヴェイダーの専用機TIEアドバンストx1に捕捉されたが、心変わりしたハンが<ミレニアム・ファルコン>で戦場に舞い戻り、ルークの窮地を救った。ヴェイダーがトレンチからはじき飛ばされた後、ルークはケノービの声とフォースに助けられ、デス・スターの小さな廃熱孔にプロトン魚雷を命中させた。帝国の誇る超兵器は反応炉の爆発によって宇宙の塵と化し、ヤヴィンの戦いは反乱軍の勝利に終わる。戦いを生き残った少数の機体(ルーク、ハン、ウェッジ、Yウング・パイロット)が帰還すると、基地で祝勝の式典が催された。大勢の反乱軍兵士が見守る中、勝利に貢献した英雄たちはレイア姫からメダルをさずけられた。
登場人物・用語
制作の舞台裏
構想
『アメリカン・グラフィティ』のポストプロダクション作業中、ルーカスは製作のゲイリー・カーツと“スペース・オペラ”作品の構想について話し合った。[2] 1973年1月、ルーカスはこのプロジェクトに着手し、5月までには映画スタジオに見せるための14ページのストーリー概要を書き上げた。[2] 彼は元々、本作を『アメリカン・グラフィティ』や『地獄の黙示録』に続けて撮影するつもりだった(後者はルーカスが制作に携わっていたが、ワーナー・ブラザーズがルーカスのスタジオであるアメリカン・ゾエトロープを拒否したため降板し、盟友のフランシス・フォード・コッポラが引き継いだ)。ルーカスが思い描いたあらすじの要点は、ベトナム戦争が行われた時代への投げかけであり、「技術を持った帝国が自由を求める少数の戦士たちを追い回す」というものであった。[3][4] 『地獄の黙示録』制作時にルーカスと一緒に仕事をしていたウォルター・マーチによれば、ベトナム戦争の真っただ中に米軍のベトナム介入を直接的に描いても世間に受け入れられないため、スペース・オペラという設定は非常に重要であったという。[5][6] 本作は宇宙空間を舞台にしており、当時興行的にヒット作の少なかったサイエンス・フィクション(SF)ジャンルに分類される。また、ルーカスはのちに「スペース・ファンタジー」や「サイエンス・ファンタジー」と言った言葉の方が本作にしっくりくると発言している。[2] ルーカスはユニバーサル・スタジオとユナイテッド・アーティスツに本作の企画を持ち込んだがどちらにも却下された(前者は直接断り、後者は10日間の選考期間を経ても返答しなかった)。[3][4] 彼はウォルト・ディズニー・スタジオ・モーション・ピクチャーズにも足を運んだがここでも断られてしまった。[3][4] ルーカスは以前に監督した『アメリカン・グラフィティ』や『THX 1138』がスタジオの手によって許可なく再編集された経験から、スタジオ・システムを嫌っていた。[7] それでもスタジオは必要不可欠だったため、ルーカスは20世紀フォックスの代表アラン・ラッド・ジュニアを説得する。ラッドはこの企画の技術的な面は理解していなかったが、ルーカスには才能があると信じていた。のちにルーカスは「(ラッドは)私に投資した。映画に投資したわけではない」と発言している。[2]
制作
1974年5月、ルーカスは脚本の草案を完成させた。草案に肉付けがなされていく過程で、登場人物たちは著しく進化していった。構想の最初期の段階で、ルーク・スカイウォーカーのキャラクターは60歳の将軍からドワーフ一家のメンバーに変更され、コレリアの密輸業者ハン・ソロはエラを持つ緑の肌をした巨大なモンスターとして描かれていた。チューバッカは、ルーカスの車で「副操縦士」を担当することが多かったペットのアラスカン・マラミュート犬、インディアナから着想が得られた。神秘的なエネルギー場であるフォースは当初、「銀河の聖杯」ことカイバー・クリスタルとして想定されていた。完成した脚本は一本の映画にするには長すぎたが、ルーカスは短縮を拒んだ。その代わり、最初の3分の1の部分をひとつの映画にまとめ、残りを続編2作に回すことで、ルーカスは『スター・ウォーズ』のオリジナル・トリロジーを頭の中に作り上げた。
ルーカスは脚本執筆中、コンセプチュアル・アーティストのラルフ・マクウォーリーを雇い、映画のコンセプト・アートを描かせた。スタジオに脚本を見せる際、ルーカスはマクウォーリーが手掛けたイラストを数枚携えて行った。結果、彼は20世紀フォックスから8,250,000ドルの予算の承認を得る(『アメリカン・グラフィティ』で好意的な評価を得ていたおかげで、ルーカスはアラン・ラッド・ジュニアとの再交渉に成功し、続編映画の権利を得ることができたのであった)。これによりルーカスは『スター・ウォーズ』の未稿の部分と商品化の際の売上の大部分を自分の手で守ることができた。
1975年、20世紀フォックスの視覚効果部門が閉鎖されたと知ったルーカスは、視覚効果の会社インダストリアル・ライト&マジック(ILM)を立ち上げた。ILMはカリフォルニア州ヴァン・ナイスで『スター・ウォーズ』製作に着手する。視覚効果のほとんどは小さな模型とゆっくり動くカメラを用いてサイズの錯覚を生み出すモーション・コントロール撮影を使用している。宇宙船のモデルはルーカスの指示を受けたジョー・ジョンストンの線描画とマクウォーリーの絵を基にしている。ルーカスは古ぼけて汚い装置、宇宙船、建物が登場する「薄汚れた世界観」を演出し、従来の清潔なサイエンス・フィクションとは一線を画す方向性を目指した。
1976年3月22日、惑星タトゥイーンのシーンを撮るためチュニジアの砂漠で撮影が始まったが、企画は様々な困難に直面した。チュニジアでは非常に珍しい暴風雨が小道具を破壊し停電を引き起こしたため、ルーカスは一週目から撮影を延期することになる。俳優アンソニー・ダニエルズがC-3POの衣装を初めて着たときには、左足の部品が粉々に割れてプラスチックを突き破り、彼の足に突き刺さった。チュニジアでの撮影が終わると、制作者たちはロンドン近郊エルストリー・スタジオの管理が行き届いた撮影環境に移った。ところが、ルーカスの作品に興味を持たない映画クルーが原因で、ここでも深刻な問題が絶えなかった。クルーの多くは本作を「子供向け映画」と見なし仕事を真面目にせず、思わず笑い出すこともあった。俳優ケニー・ベイカーは当時を振り返り、この映画がコケると思っていたと告白した。ハリソン・フォードは台本に違和感を感じ、「ジョージ、このセリフは書くことはできても、実際に言うのは無理だ」と発言した。
ルーカスはゲイリー・カーツが「昔かたぎ」や「偏屈」と呼ぶ撮影監督ギルバート・テイラーと衝突した。さらにその上、インディーズ映画で経験を積んだルーカスは、製作のほとんどを1人でこなすことに慣れていた。テイラーはルーカスの詳細なカメラ指示が自分の役割を踏みにじっていると感じ、ルーカスの意見を無視して対抗した。また、ルーカスは衣装、セット、小道具が、思い描いていた本来の『スター・ウォーズ』からかけ離れていることにいらだちを感じるようになった。彼はほとんど俳優たちと話さなくなり、俳優たちは指示が少ない割に監督は多くを期待しすぎだと感じていた。ルーカスの指示は、たいてい「速く」や「もっと激しく」といった単純な言葉の組み合わせだったという。
ラッドはスタジオにおける数少ない協力者のひとりだった。彼は膨れ上がる予算や複雑な脚本草案について取締役会メンバーの精査に対応した。制作スケジュールが2週間遅れになると、ラッドはルーカスに1週間で完成させるか制作を打ち切らなければいけないと伝えた。クルーはそれぞれルーカス、カーツ、ロバート・ワッツが率いる3つのユニットに分かれた。この新システム導入により、制作はスタジオの締切に間に合った。1977年4月22日、ILMがショット110P(スター・デストロイヤーのシーン)を撮り、撮影終了となった。
『スター・ウォーズ』はもともと1976年クリスマスに公開される予定だった。ところが完成遅延により1977年夏に延期された。ただでさえ締切で心が乱れていたルーカスは、編集者による最初の映画カットが「大惨事」だったことにショックを受ける。自分の言うように映画を編集するよう説得を試みた後、ルーカスは編集者をポール・ハーシュとリチャード・チューに変更した。ルーカスは同時に、当時の妻マーシア・ルーカスが、マーティン・スコセッシ監督の『ニューヨーク・ニューヨーク』編集の傍らに本作の編集手伝いをすることを許可した。作業に取り組んだリチャード・チューは、本作がマニュアル通りの手順でカットされており、マスターショットからクローズアップという流れの繰り返しで、ペースに覇気が無いと感じた。のちに彼はこのペースを生み出しているのはカットではなく俳優だと気づく。ハーシュとチューは同時に2つのリールを編集し、先に終わったほうが次に移るという手法を取った。
制作中、ルーカスは頻繁に塞ぎ込み、出演者たちは彼を笑わそうと気を遣った。あるとき、ルーカスが高血圧で過労と診断され、ストレス・レベルを下げるよう警告を受けたため、企画が困難に直面した。また、20世紀フォックスからの圧力によりポストプロダクションも同様に過酷を極めた。さらに、マーク・ハミルが自動車事故で顔を負傷したため撮り直しが不可能となってしまった。
一方でILMはかつてないような特殊効果の作成に悩んでいた。会社はルーカスがやり直しを求めた4つのシーンで資金の半分を使い果たしていた。さらに、ILMの社員は規律にかけるという事実が露見し、ルーカスはたびたび足を運んでスケジュール通りに運んでいるか確かめなければならなかった。数百もの未完成ショットが残る中、ILMは1年分の作業を半年で終える必要があった。ルーカスは古い戦争映画の空中戦を一緒に編集し、シーンの配分を改善することでILMを鼓舞した。
制作とポストプロダクションの大混乱の中、チームはキャラクター・ヴォイスと音響効果を決定した。音響担当ベン・バートはルーカスが「オーガニック・サウンドトラック」と呼んだ音のライブラリを作った。チューバッカの鳴き声のため、バートは犬、熊、ライオン、虎、セイウチの声を録音・合成し、言葉を作った。ルーカスとバートはエレクトロニック・シンセサイザー越しにふたりの声のフィルターをかけてR2-D2の機械音を作成した。ダース・ヴェイダーの呼吸音はバートがマイクをつけたスキューバ・タンクで呼吸することで完成した。コスチュームを着てダース・ヴェイダーを演じたデイヴィッド・プラウズの英語にウェスト・カントリー訛りがあったため、ルーカスはプラウズの声を使おうとしなかった。彼はダース・ヴェイダーの声にオーソン・ウェルズを希望した。しかし、ウェルズの声は認知度が高すぎると考えて彼ほど有名ではないジェームズ・アール・ジョーンズを起用した。ルーカスはまた、アンソニー・ダニエルズの声をC-3POに使おうとしなかった。スタン・フレバーグなど30人ほどの名の通った声優がこのドロイドのセリフを読んだ。ダニエルズによれば、有名な声優のひとりがこの役にダニエルズ自身の声を推薦した。
ルーカスはこの映画の初期カット版をブライアン・デ・パルマ、ジョン・ミリアス、スティーヴン・スピルバーグといった友人監督たちに見せたが反応は芳しくなかった。このときの視聴者の中で唯一映画を楽しんだと主張するスピルバーグは、勢いが足りないのは特殊効果が完成していないからだと考えた。ルーカスはのちに、彼らは正直で映画に呆然としたようだと回想する。対照的にアラン・ラッド・ジュニアと20世紀フォックスの社員たちは映画に夢中になった。重役のひとりギャレス・ウィガンは「今まで見た中で最高の映画だ」とルーカスに伝え上映中に涙を流した。これ以前にスタジオの重役から認められたことがなかったルーカスはこの経験にショックと誇りを感じた。遅延で予算は800万ドルから1100万ドルまで膨れ上がっていたがそれでも本作は『スター・ウォーズ』サーガの中では最低額である。
公開
チャールズ・リピンコットはルーカスの制作会社ルーカスフィルムに、『スター・ウォーズ』のマーケティング・ディレクターとして雇われた。20世紀フォックスは版権物のTシャツとポスター以外マーケティングにはほとんど協力しなかったためリピンコットは他の道を探した。彼はスタン・リー、ロイ・トーマス、マーベル・コミックスとコミック版の、デル・レイ・ブックスとは小説版の契約を交わした。『トランザム7000』など他の夏映画に『スター・ウォーズ』が埋もれてしまうことを懸念した20世紀フォックスは、公開日を戦没将兵追悼記念日前の水曜日1977年5月25日に移動した。しかしこの映画を上映しようとする映画館はほとんどなかった。これに対し20世紀フォックスはベストセラー小説を原作にした前評判の高い映画『真夜中は別の顔』を上映したければ『スター・ウォーズ』も上映するように要求した。
映画はすぐさま話題を呼んだ。公開後3週間以内で株価は倍に跳ね上がり新記録となった。1977年以前の20世紀フォックスの年益は3700万ドルだったが、1977年には7900万ドルを稼いだ。本作の文化的中立が世界での成功にもつながったが、ラッドは日本でのプレミア時には不安だったという。それは上映後観客が静かだったため映画が退屈だったのではないかと恐れたためである。ラッドはのちに、日本では沈黙こそが映画への最大の敬意であると教えられた。一方で、C-3PO、R2-D2、ダース・ヴェイダーが足跡を残したグローマンズ・チャイニーズ・シアター前でのイベントには数千人が押しかけた。『スター・ウォーズ』商品は公開後から熱中した子供たちに売れていたが、映画が失敗すると考えていたケナー・トイズのみがリピンコットのライセンス・オファーを受けていた。ケナーはクリスマス・キャンペーンに引換券が入った「空箱」を販売することで爆発的な需要を凌いだ。この引換券は1978年3月におもちゃと交換された。
1978年、映画の人気絶頂期、スミス=ヘミオン・プロダクションズが、ルーカスに『スター・ウォーズ・ホリデー・スペシャル』の企画を持ち込んだ。結果は失敗と評されることが多くルーカス自身もこの作品を否定した。
この映画はもともと『エピソード4』や副題『新たなる希望』がついていない『スター・ウォーズ』として公開され、今でもそう呼ばれることがある。1980年の続編『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』でオープニング・クロールにエピソード数と副題が付けられた。1981年4月10日に1作目が再上映された際、もとのオープニング・クロールの上に『エピソード4/新たなる希望』が追加された。ルーカスは最初から6作品のみの予定だったと主張しているが、ルーカスフィルムの代表者たちは初期のインタビューで9本や12本といった映画の構想を語った。本作は1978年、1979年、1981年、1982年、1997年に劇場で再上映された。
特別篇
ILMがスティーヴン・スピルバーグの『ジュラシック・パーク』でコンピューター生成の効果を使うと、ルーカスは『スター・ウォーズ』の最初のヴィジョンにデジタル技術が追いついたと結論づけた。『スター・ウォーズ』20周年記念セレブレーションの一環として、1997年、『新たなる希望』は『帝国の逆襲』、『ジェダイの復讐』と共にデジタル・リマスターが施され、「スター・ウォーズ・トリロジー 特別篇」というキャンペーン・タイトルのもと劇場で再公開された。特別篇にはハン・ソロとジャバ・ザ・ハットの会見など、公開時に予算、技術、時間の制約で実現できなかったCGを用いたショットやシーンが追加された。変更のほとんどは些細でわかりづらいものであったが、ファンの中にはルーカスが追加によって映画を破壊したと考える者もいた。例えば、グリードが先にハン・ソロを撃つシーンは議論を呼び「Han Shot First」というフレーズを冠したTシャツの登場に繋がった。
DVD販売
2004年
『新たなる希望』は2004年9月21日に『帝国の逆襲』、『ジェダイの帰還』、特典映像ディスクとのボックスセットでDVDとして発売された。本作はデジタル・リストアとリマスターが施されジョージ・ルーカスによってさらに変更が加えられた。
DVDにはジョージ・ルーカス、ベン・バート、デニス・ミューレン、キャリー・フィッシャーによる音声解説が収録されている。特典ディスクにはドキュメンタリー「夢の帝国:スター・ウォーズ・トリロジーの歴史」、3つの短編、予報と劇場予告、TVスポット、スチール・ギャラリー、『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』の独占的プレビュー、体験可能なルーカスアーツのゲーム『スター・ウォーズ バトルフロント』のXboxデモ版、そして『エピソード3ゲーム版』の「メイキング・オブ」ドキュメンターが入っている。セットは2005年12月に特典ディスクを抜いた「リミテッド・エディション」ボックスセットとして3枚のディスクで再販された。
2006年
2006年9月12日から2006年12月31日にかけて、三部作は2枚組リミテッド・エディションDVDセットとして1作ずつ分けて発売された。特典として映画の劇場公開版ディスクが付属した。劇場公開版は1993年の非アナモフィック・レーザーディスクのマスターを使用しており近年のDVDスタンダードに変換されていなかったため議論を呼んだ。
2011年(Blu-ray)
2015年(デジタル発売)
2015年4月7日、ウォルト・ディズニー・スタジオ、20世紀フォックス、ルーカスフィルムは公開済みの『スター・ウォーズ』6作品のデジタル・リリースを共同で発表した。2015年4月10日、フォックスが『新たなる希望』のデジタル・ダウンロード版を発売した(残りの5作はディズニーが発売した)。
音楽
ルーカスの『スター・ウォーズ』構想には、それぞれのキャラクターや重要な物体に応じたライトモティーフ(例えば、リヒャルト・ワグナーのオペラなどで使用された大きな効果を生む方法)のある壮大な楽音も含まれていた。この目標のため、映画に望む効果を示そうとクラシック音楽の一部を集めたコレクションを作曲家ジョン・ウィリアムズに聴かせた。ウィリアムズが作曲した音楽はもとのクラシックの断片をはっきりと連想させるものになっている。特に:
- 冒頭のブロッケード・ランナー捕獲に関連付けられた音楽はホルストの『惑星』中の「火星」に非常に似ている。オリジナル・サウンドトラック・レコードのライナーノーツにおいてウィリアムズは、なぜ『惑星』をそのまま使用しなかったかを説明することで「火星」とのつながりを暗黙のうちに認めている。彼は自分ですべて書けばこの曲をもっとまとまった感じにできると考えたのだと述べている。
- 「フォースのテーマ」(または「ベンのテーマ」)はバレエ、白鳥の湖の一部分と比較される。
- 映画の終わりの授賞式の音楽はフォース/ベンのテーマで始まり、ライナーノーツでのウィリアムズの解説によれば、「The Coronation」を思わせる音楽に切り替わる(エルガーのものと思われる。あるいはウィリアム・ウォルトンの「王冠」の可能性が高い)。
- オープニング・タイトル(「スター・ウォーズのテーマ」あるいは「ルークのテーマ」)はジョン・バリーの『野生のエルザ』のテーマとの類似性が指摘されるがエーリヒ・ヴォルフガング・コルンゴルトが作曲した1942年の映画『嵐の青春』のオープニング・ストレインにも似た部分がある。『E.T.』などのちのウィリアムズの曲もこれに似ていると言われている。聴き比べをすればこれらとはまったく同じでないことがわかるが、多くの同じ音程を用いて似たような、あるいは、少なくとも関連した感情作用をもたらしている。
- C-3POとR2-D2のタトゥイーン到着時の音楽はイーゴリ・ストラヴィンスキーの『春の祭典』第2部「生贄の儀式」序曲に非常に似ている。
有名な音楽テーマ
- スター・ウォーズのメイン・タイトル
- プリンセス・レイアのテーマ
- バイナリー・サンセット
サウンド
『新たなる希望』封切り時の70mmプリントはサラウンド・サウンド最初期の大規模公開の一例だったが ― これは50年代初頭のシネラマおよびシネマスコープ実験以来ほとんど見られないものであった ― 当初多くの劇場でモノラル上映された。
ソースとインスピレーション
この映画は多くのネタ元からインスピレーションを得ている。これらは意図的なものでありジョージ・ルーカスもインタビューで認めている。それは神話的構造に顕著である。
ルーカスは1958年(アメリカでは1962年公開)の黒澤明の映画『隠し砦の三悪人』に強力な影響を受けたと述べた。『隠し砦の三悪人』における滑稽な農民ふたりと『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』における2体のおしゃべりなドロイドの関連は明白である。事実、ドロイドがタトゥイーンの砂漠で誰もいないことを嘆くシーンでは音楽や「ワイプ」カットのスタイルまで『隠し砦の三悪人』への明らかなオマージュになっている。モッティがダース・ヴェイダーに食ってかかるシーンでは、ヴェイダーが言葉の途中で遮る前、モッティが反乱軍の「隠し砦」(hidden fortress)と言いかけている。
クライマックスのヴェイダーが攻撃を受けるシーンは1950年代の映画『暁の出撃』において、イギリス空軍のランカスター爆撃機がルール地方の重工業を機能停止させようと、厳重に防備された貯水池を飛びドイツの人工ダムに反跳爆弾を落とすシーンをモデルにしている。『暁の出撃』のセリフのいくつかは『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』のクライマックスに流用され、さらに『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』の撮影監督ギルバート・テイラーは『暁の出撃』の特殊効果シーンを撮影している。
『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』のテーマや要素に示唆を与えた作品を挙げる際、ルーカスはウォルター・グラウマン監督の『633爆撃隊』に言及した。『新たなる希望』でルークが溝の中でXウィングから攻撃してデス・スターを破壊する「トレンチ・ラン」は、少なくともその一部は、『633爆撃隊』の終盤において、イギリス空軍の戦闘機数機が地上部隊の激しい対空攻撃をかわしてフィヨルドのわずか上を飛行し、峡谷の終わりに設置された基地内の工場を攻撃するシーンに影響を受けている。
削除されたシーン
砂漠、タスケン・レイダーの谷、破壊された家、ヤヴィン4のハンガーにおけるルークなど『スター・ウォーズ』全体でルークがポンチョを着て登場するシーンが何バージョンも存在する。最終カットでも使用されたポンチョ着用シーンはドッキング・ベイ94とデス・スター脱出時の<ミレニアム・ファルコン>、ヤヴィン4到着時のみである。
砂漠のルーク
タトゥイーンの砂漠でWEDトレッドウェル・ドロイドの助けを借りて水分凝結機を修理していたルーク・スカイウォーカーは空で何かが光っていることに気が付く。マクロバイノキュラーを使ったルークは、2隻の戦艦が大気圏内で交戦しているのを目撃する。彼はランドスピーダーに飛び乗る。誤作動を起こしたトレッドウェルのヒューズが飛び動くことができなくなった。ルークは友人たちに会うため砂漠を駆け抜ける。このシーンはもともと<タナヴィーIV>襲撃直後、ダース・ヴェイダー登場前に使われる予定だった。このシーンの使用可能なフッテージは存在しないと思われていた。現存するフッテージは長年の劣悪な保存環境により劣化していた。映画に編集が加えられる前、このシーンは最終カット版よりはるかに早い段階で観客が初めてルーク・スカイウォーカー青年を目にするところであった。これは続くルークとアンカーヘッドの友人たちのシーンとともに削除された。ジョージ・ルーカスは当初、同業の友人たちによるドロイドの視点だけでは観客がストーリーを理解しにくいだろうという助言を受けて執筆・撮影した。ストーリーはまさにドロイドの冒険でありルークとオビ=ワンをつなげるのもこの2体であると悟ったルーカスはこの場面を除外した。
トシ・ステーション
ルークのランドスピーダーはアンカーヘッドの町に飛び込み老婆の横をかすめていく。ルークはトシ・ステーションに駆け込み興奮して友人たちに惑星の上の戦闘について話す。彼はアカデミーのため惑星を離れていた友人ビッグズ・ダークライターとの再会を喜ぶ。ディーク、ウィンディ、ケイミー、フィクサー、ビッグズたちは皆、ルークに続いて彼のマクロバイノキュラーで上空の戦闘を見ようとする。戦闘は既に終わっており、友人たちはルークが嘘をついたとして馬鹿にする。このシーンは<タナヴィーIV>で脱出ポッドでR2-D2とC-3POが射出された直後、レイア姫がダース・ヴェイダーのもとに連行される前に入る予定だった。このシーンはルークが同年代たちに馴染めずタトゥイーンでの一生を思い描いていることを示している。ストーリーラインのペースが決定打であると思われるが、1977年の『スター・ウォーズ』粗編版を友人監督たちに見せた際の「宇宙版アメリカン・グラフィティだ」という冗談も心の片隅にあったと思われる。このからかいがルーカスのアンカーヘッドの場面カットをに影響した可能性がある。ルークが老婆とすれ違うシーンは完成されることのなかった特殊効果シーンである。
ルークとビッグズ
このシーンはルークと旧友ビッグズ・ダークライターの会話である。ビッグズはタトゥイーンを去ってパイロットになるため帝国アカデミーに入っており休暇で星に戻ってきていた。ビッグズの成功に対するルークの羨望と叔父に対する責務、タトゥイーンに残らなかればならない理由とがぶつかり合う。ビッグズは静かに、帝国と対立する反乱軍に入ることにしたと伝える。張り詰めた感情的な会話の後、ふたりの若者は最後の別れを告げ合う。このシーンはC-3POが砂漠で遠くにジャワのサンドクローラーを発見しR2-D2が谷でジャワに捕まるシーンの間に来るはずだった。ルークとビッグズの場面はアンカーヘッドでのタトゥイーン関連のバックストーリーの一部であり、ペース配分の問題からか、これ以前のタトゥイーン関連シーンと一緒にカットされている。
R2-D2捜索
R2-D2は新たな主人ルーク・スカイウォーカーのもとから脱走する。早朝、ルークと3POはR2捜索のためランドスピーダーに乗り込み、3POが車両を操縦する。彼らはR2、ベン・ケノービ、オーウェン叔父さんがどれほど起こるかについて話し合う。このシーンはタスケン・レイダーによる襲撃の前、ルークと3POがR2捜索をはじめるシークエンスの最初の部分に当たる。この場面にはルークのテーマの明るいバージョンが使われている。この音楽はオリジナルLPおよびCDの構成における「砂漠の蛮族タスケン・レイダーズ」の小音符の始め、あるいは特別篇アルバムの「LandSpeeder Search」で聴くことができる。CGI以前の時代のこのランドスピーダー・コックピット場面のようなシーンは後ろのスクリーンに背景を投影して撮影された。このシーンはクオリティが低かったためにカットされた。
ヴェイダーとバスト将軍
この短いシーンで、ダース・ヴェイダーとバスト将軍は並んでデス・スターの廊下を歩く。バストは消えたドロイドの捜索範囲がモス・アイズリー宇宙港にまで広がったことを報告する。ヴェイダーは尋問に耐えるレイア姫を観察し、バストは力ずくで口を割らせようとするターキンの計画を「愚か」であると大胆にも批判してみせる。このシーンはハン・ソロがドッキング・ベイ94でジャバ・ザ・ハットと会うシーン(これもカットされた)とルークとベンがドッキング・ベイ94で<ミレニアム・ファルコン>を見つけるシーンの間に入るはずだった。
評価
『スター・ウォーズ』は1977年5月25日に32劇場ではじめて公開され、劇場の売上記録を破ってブロックバスター映画の最初のひとつになった。そして現在でも史上最高興行収入映画のひとつに留まっている。キャストやクルーの中には劇場を通りかかった時に広がりを見せる行列を見たと述べるものがいる。モデル・メーカーのような技術スタッフでさえもサインを求められ出演者たちはたちまち国民的スターとなった。アメリカにおける初公開時の興行収入は307,263,857ドルに達し、全国公開の最初の週末だけで6,806,951ドルを稼ぎ出した。ルーカスは上映中の殆どの期間をロサンゼルスのサウンド・スタジオで過ごしたと述べた。そして当時の妻マーシアとランチに出かけたとき、グローマンズ・チャイニーズ・シアターに続く、『スター・ウォーズ』を待つ長い行列を見たという。本作は1977年の最高興行収入を記録し1982年に『E.T.』に破られるまで史上最高額だった(続く再上映によって『スター・ウォーズ』は再び最高収入映画となったが1997年にジェームズ・キャメロンのブロックバスター『タイタニック』に破られている)。『スター・ウォーズ』は全世界で797,900,000ドルを売り上げ3億ドル超えを達成した最初の映画となった。インフラ調整をすれば、『風と共に去りぬ』に次いで、史上2番目に興行収入を得た映画である。
「ニューヨーク・タイムズ」は『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』を「史上もっとも美しい映画活劇である」と評した。ロジャー・イーバートは本作を「幽体離脱体験」と表現し、特殊効果を『2001年宇宙の旅』のそれと比較して、この作品の真の強みはその「純粋な物語性」にあると述べた。ヴィンセント・キャンビーは本作を「もはや様式化したコミックブック・アドベンチャーのスタイルを好む人たちを間違いなく楽しませる映画」と評した。「ザ・ニューヨーカー」のポーリン・ケイルはこの映画を、「本作には息抜きできるところがない、叙情味もない」、さらに「感情面でのつかみがない」と批判した。「シカゴ・リーダー」のジョナサン・ジョーゼンバウムは「どのキャラクターにも深みがなく、皆が非現実的な小道具・大道具と化してしまっている!」と述べた。「ボストン・フェニックス」のピーター・ケナフによれば「スター・ウォーズはジャワの盗まれ廃棄された、かろうじて動くドロイドの山と同じように見掛け倒しのガラクタ映画に過ぎない」という。「ザ・ニュー・リパブリック」のスタンリー・カウフマンは「彼の仕事ぶりは『THX-1138』ほど画期的ではない」と発言し批判の姿勢を見せた。ロッテン・トマトにおいてはサイトに寄せられた54の批評のうち51(全体の95%)が肯定的であり、「アクションと特殊効果は一流である」ということで一致している。
1989年、アメリカ議会図書館の国立フィルム登録簿に、「文化的、歴史的あるいは審美的に重要な映画」として本作が選定された。2006年、ルーカスによるオリジナルの脚本が、全米脚本家組合によって史上最高の脚本68位に選ばれた。アメリカン・フィルム・インスティチュートは本作を20世紀の映画ベスト100において15位に位置づけている。イギリスのチャンネル4が行った投票では『新たなる希望』(続編の『帝国の逆襲』と共に)史上最高の映画に選ばれた。アメリカン・フィルム・インスティチュートは100年シリーズとしてカテゴリ別に「トップ100リスト」を作り、作品と関連要素がいくつかランクインしている。例えばスリルを感じる映画ベスト100の27位、感動の映画ベスト100の39位である。ヒーローと悪役ベスト100ではハン・ソロが15位、オビ=ワン・ケノービが37位に選ばれた。頻繁に登場する「フォースと共にあれ」("May the Force be with you")は名セリフベスト100の8位にランクインした。映画音楽ベスト100ではジョン・ウィリアムズの音楽が1位に輝いた。
本作は1978年のアカデミー賞において美術賞(ジョン・バリー、ノーマン・レイノルズ、レスリー・ディリー、ロジャー・クリスチャンら)、衣裳デザイン賞(ジョン・モロ)、編集賞(ポール・ハーシュ、マーシア・ルーカス、リチャード・チュウら)、視覚効果賞(ジョン・スティアーズ、ジョン・ダイクストラ、リチャード・エドランド、グラント・マキューン、ロバート・ブララックら)、作曲賞(ジョン・ウィリアムズ、3度目の受賞)、録音賞(ドン・マクドゥーガル、レイ・ウェスト、ボブ・ミンクラー、デレク・ボールら)、音響効果への名誉賞(ベン・バート)を受賞した。加えて、アレック・ギネスが助演男優賞、ジョージ・ルーカスが脚本賞と監督賞にそれぞれノミネートされ、プロダクション業務担当としてゲイリー・カーツが作品賞ノミネートを受けた。ゴールデングローブ賞では作品賞ドラマ部門、監督賞、助演男優賞(アレック・ギネス)、作曲賞にノミネートされたが、受賞は作曲賞のみに留まった。英国映画テレビ芸術アカデミーでは作品賞、編集賞、衣装賞、プロダクション/アート・デザイン賞、音響賞、作曲賞にノミネートされ音響賞、作曲賞を受賞した。ジョン・ウィリアムズによるサウンドトラック・アルバムはグラミー賞 映画・テレビサウンドトラック部門を受賞し、作品はヒューゴー賞の映像部門に選ばれた。1997年、MTVムービー・アワードは『スター・ウォーズ』三部作における功績をたたえ、チューバッカに特別功労賞を与えた。
当初、映画の興行が振るわなかった場合、ルーカスは小説『侵略の惑星』を低予算映画として製作し続編にする予定だった。「エンパイア」誌におけるアラン・ディーン・フォスターへのインタビューによれば、『侵略の惑星』は『スター・ウォーズ』が失敗した際に低予算の続編として撮影するために書いたものであるという。ハリソン・フォードはこの物語の映像化作品への出演契約をしておらず、この小説にハン・ソロが登場しないのもそのためである。しかし映画は成功しルーカスは『帝国の逆襲』を制作することが可能になったのである。
その後
小説
映画公開の6ヶ月前の1976年12月、本作の小説版が発売された。作者はジョージ・ルーカスとなっているが実際に執筆したのはのちに最初の拡張世界作品『侵略の惑星』を書くアラン・ディーン・フォスターであった。小説版は当初『スター・ウォーズ ルーク・スカイウォーカーの冒険より』というタイトルで発表され、その後の版では『スター・ウォーズ』となり、現在では映画版に合わせて『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』に変更されている。トシ・ステーションにおけるルークとビッグズやドッキング・ベイ94におけるハンとジャバのやりとりなど脚本に存在し映画本編では削除された場面がいくつか描かれている。デューバックに乗るストームトルーパーのクローズアップなどほかの削除されたシーンはあとに発売された版に写真で挿入されている。
いくつか細かな変更点がある。例えば、ルークのコールサインは映画ではレッド5だったが本書ではブルー5となっていることなどである。チャールズ・リピンコットは1976年11月、デル・レイ・ブックスと小説版出版の契約を交わした。1977年2月の時点で50万部を売り上げた。
ラジオドラマ
1981年、ブライアン・デイリーがナショナル・パブリック・ラジオのために執筆しジョン・マッデンが監督した映画のラジオドラマ版が同局で放送された。この作品は権利をラジオ局に渡したジョージ・ルーカスからの協力があった。ジョン・ウィリアムズの音楽とベン・バートの音響効果も使用でき、マーク・ハミル(ルーク・スカイウォーカー)とアンソニー・ダニエルズ(C-3PO)も映画と同じ役で出演した。ラジオ版にはタトゥイーン上空の戦いを双眼鏡越しに眺めるルーク・スカイウォーカーやスカイホッパー・レース、ダース・ヴェイダーのプリンセス・レイア尋問など映画の公開版ではカットされた場面が存在する。
コミックス
数十年の間に映画のコミック版が複数回発売されている。
- マーベル・コミックスはロイ・トーマスがストーリー、ハワード・チェイキンがイラストを担当した、6パートからなるコミック版スター・ウォーズシリーズを発売した。
1978年、アル・ウィリアムソンはコミック・ストリップ形式のコミック版を執筆したが公開されることはなかった。
- 1997年の特別篇公開と同時に、ダークホースコミックスはブルース・ジョーンズがストーリー、エドゥアルド・バレートがイラスト担当の4部構成のコミック版を発売した。
- 田巻久雄による漫画版が1997年に日本で発売され、1998年にはアメリカでも出版された。
クレジット
キャスト
- マーク・ハミル - ルーク・スカイウォーカー
- ハリソン・フォード - ハン・ソロ
- キャリー・フィッシャー - レイア・オーガナ王女
- ピーター・カッシング - グランド・モフ・ターキン
- アレック・ギネス - ベン・ケノービ
- アンソニー・ダニエルズ - C-3PO と CZ-3 (クレジットなし)
- ケニー・ベイカー - R2-D2
- ピーター・メイヒュー - チューバッカ
- デイヴィッド・プラウズ - ダース・ヴェイダー
- ジェームズ・アール・ジョーンズ - ダース・ヴェイダーの声(オリジナル版ではクレジットなし)
- フィル・ブラウン - オーウェン叔父さん
- シェラ・フレイザー - ベルー叔母さん
- ジャック・パーヴィス - チーフ・ジャワ
- アレックス・マクリンドル - ドドンナ将軍
- エディ・バーン - ウィラード将軍
- マイケル・ベル - ウィラード将軍の声 (クレジットなし)
- ドリュー・ヘムリー - レッド・リーダー[8]
- デニス・ローソン - レッド・2 (ウェッジ)
- コリン・ヒギンズ - フェイク・ウェッジ (クレジットなし)
- デイヴィッド・アンクラム - ウェッジ・アンティリーズの声 (クレジットなし)
- ギャリック・ヘイゴン - レッド3 (ビッグズ)
- ジャック・クラフ - レッド4 (ジョン・"D")
- ウィリアム・フットキンス - レッド6 (ポーキンス)
- アンガス・マッキネス - ゴールド・リーダー
- ジェレミー・シンデン - ゴールド2
- グラハム・アシュリー - ゴールド5
- ドン・ヘンダーソン - タッグ将軍
- リチャード・レ・パーメンティア - モッティ将軍
- レスリー・スコフィールド - コマンダー#1
- マーク・オースティン - ボバ・フェット (クレジットなし; 特別篇)
- リック・ベイカー - フィグリン・ダンとヘム・ダズン (ともにクレジットなし)
- ジェイ・ベネディクト - ディーク (クレジットなし; 削除されたシーン)
- ライトニング・ベア - ストームトルーパー (クレジットなし)
- ジョン・バーグ - モモー・ネイドンとテック・モア (ともにクレジットなし)
- ドウ・ベスウィック - ライリン・カーンとイカベル・ゴント (ともにクレジットなし)
- ポール・ブレイク - グリード (クレジットなし)
- マリア・デ・アラゴン - グリード (クレジットなし; 再撮影)
- ラリー・ワード - グリードの声 (クレジットなし)
- アンディ・ブラッドフォード - タンブリス中尉 (クレジットなし)
- テッド・バーネット - ウーハー (クレジットなし)
- ジョン・チャップマン - 反乱軍パイロット (クレジットなし)
- ジェニー・クレスウェル - ジェニー (クレジットなし; 削除されたシーン)
- アルフィ・カーティス - ドクター・エヴァザン (クレジットなし)
- ロバート・A・デンハム - クロッカー (クレジットなし)
- ピーター・ダイアモンド - ガルーフ・ラフォー、ストームトルーパー、 タスケン・レイダー、デス・スター・トルーパー (すべてクレジットなし)
- エディ・イードン - ペロー・スクランバス (クレジットなし)
- サディ・イードン - ガリンダン・エズ・ゼイヴァー (クレジットなし)
- ジョン・ウェイン - ガリンダン・エズ・ゼイヴァーの声 (アーカイブ音声; クレジットなし)
- キム・フォーキンバーグ - ジャス・パー (クレジットなし)
- アンソニー・フォレスト - レイズ・ロネオズナー (クレジットなし; 削除されたシーン)
- ピーター・ゲディス - アンティリーズ船長 (クレジットなし)
- ラスティ・ゴーフィー - カーベ、ジャワ、パワー・ドロイド (すべてクレジットなし)
- ローリー・グディ - ハーチェク・カル・ファス (クレジットなし)
- クリスティン・ヒュウェット - シェイダ・デュカル (クレジットなし)
- アル・ランパート - コマンダー・デイン・ジア (クレジットなし)
- レイン・リスカ - マフタックとカンティーナ・バンド・メンバー (ともにクレジットなし)
- 象のマーディ - バンサ (クレジットなし)
- マンディ・マートン - スウィラ・コーレイ (クレジットなし)
- ロバート・オマハニー - セロン・ネット (クレジットなし)
- ローネ・ピーターソン - オズレオ・プリナート (クレジットなし)
- マーカス・ポウェル - ライカー・ライジャード (クレジットなし)
- パム・ローズ - リーサブ・サーリン (クレジットなし)
- ジョージ・ルービセク - コマンダー・プラジ (クレジットなし)
- ピーター・ロイ - 反乱軍エンジニア (クレジットなし)
- エリカ・シモンズ - タウス・カー (クレジットなし)
- アンジェラ・ステインズ - キャロリー・デュリン (クレジットなし)
- クー・スターク - ケイミー・マーストラップ (クレジットなし; 削除されたシーン)
- ピーター・サマー - トレイダム中尉 (クレジットなし)
- マルコム・ティアニー - チルゼン中尉 (クレジットなし)
- フィル・ティペット - ドイック・ナッツ (クレジットなし)
- バーネル・タッカー - デル・ゴーレン (クレジットなし)
- ホウィー・ウィード - ケトウォールとメラス (ともにクレジットなし; 特別篇)
- アルフ・マンガン - スニヴィアン (クレジットなし)
- アーサー・ロートン - スニヴィアン (クレジットなし)
- アネット・ジョーンズ - ニンバネル (クレジットなし)
- バリー・コッピング - グラスショッパー (クレジットなし)
クルー
- 監督・脚本 - ジョージ・ルーカス
- 製作 - ゲイリー・カーツ
- 製作総指揮 - ジョージ・ルーカス
- プロダクション・デザイナー - ジョン・バリー
- 撮影監督 - ギルバート・テイラー
- 音楽 - ジョン・ウィリアムズ
- 演奏 - ロンドン交響楽団
脚注
- ↑ スター・ウォーズ タイムライン
- ↑ 2.0 2.1 2.2 2.3 「夢の帝国 スター・ウォーズ・トリロジーの歴史」 スター・ウォーズ・トリロジー・ボックス・セットDVDドキュメンタリー(2005年)
- ↑ 3.0 3.1 3.2 カイル・スミス(2014年10月21日)スター・ウォーズはジョージ・ルーカスによる秘密のベトナム抗議「ニューヨーク・ポスト」2016年3月25日閲覧
- ↑ 4.0 4.1 4.2 「How Star Wars Conquered the Universe: The Past, Present and Future of a Multibillion Dollar Franchise」; クリス・テイラー; Basic Books (2014年)
- ↑ http://www.yomyomf.com/star-wars-is-a-metaphor-for-the-vietcong-kicking-american-ass-in-the-vietnam-war/
- ↑ 「The Conversations: Walter Murch and the Art of Editing Film」. Ondaatje, Michael; Knopf (2005)
- ↑ スティーヴ・シルバーマン [1] ワイアード・マガジン 2006年10月1日閲覧
- ↑ Red Leader - 旧データバンク (リンク無効; バックアップ)
外部リンク