トバイアス・ベケット(Tobias Beckett)は惑星グリー・アンセルム出身の人間男性で、銀河帝国の時代にクルーを率いて数え切れないほどの強奪計画を行ってきたプロの泥棒である。用心深い性格のベケットはRSKF-44重ブラスター・ピストルとDG-29重ブラスター・ピストルという2丁のブラスターを携帯していた。ベケットは射撃の名手として知られ、賞金稼ぎオーラ・シングを殺したと噂になっていたが、彼自身はそれを肯定も否定もせず、シングは高いところから落ちて死んだとしか言わなかった。多額の借金を抱えていたベケットは、いつの日か故郷グリー・アンセルムに戻ってヴァラコードの弾き方を習うという夢を叶えるため、ドライデン・ヴォス率いる犯罪シンジケート・クリムゾン・ドーンから仕事を請け負っていた。10 BBY、ベケットはクルーのリオ・デュラントやヴァルとともに惑星ミンバンの戦場を訪れ、帝国軍のATホーラーを盗み出した。その際、彼は若きハン・ソロやチューバッカと出会い、この2人をクルーに加えた。
ベケットたちは手に入れたATホーラーで惑星ヴァンドアにおける強奪作戦に乗り出し、コアクシウムを運搬中のコンヴェイエクスを車両ごと奪い去ろうとした。しかし彼はエンフィス・ネスト率いるクラウド=ライダーズや帝国軍の妨害に遭い、リオとヴァルを失ったばかりか、コアクシウムを手に入れることもできなかった。ベケットとハン、チューバッカは組織への埋め合わせのためボスから新しい任務を引き受け、ヴォスの副官であるキーラや、YT-1300軽貨物船<ミレニアム・ファルコン>の持ち主であるランド・カルリジアンとともにケッセルのスパイス鉱山へ向かう。彼らはパイク・シンジケートの鼻先から未精製のコアクシウムを盗み出し、惑星サヴァリーンのビス精製所へ運ぶことに成功した。しかし彼らはこの星でクラウド=ライダーズに取り囲まれ、交渉を持ちかけられた。ハンがエンフィス・ネストを助けるためヴォスを出し抜こうとしていることを知ったベケットは、計画から降りたふりをし、ハンの裏切りを密告して自分だけ儲けを手にしようとした。しかしベケットの二重の裏切りはハンに読まれていた。早撃ちに破れたベケットは、他人を信じるなという自分の教えを守ったハンを褒め、命を落とした。
経歴[]
生い立ち[]
- 「トバイアス・ベケットか。オーラ・シングを殺した」
「押しただけだ。あの女は落下で死んだ」 - ―ランド・カルリジアンとトバイアス・ベケット[出典]
人間の男性、トバイアス・ベケットは[1] 銀河系のミッド・リムに位置する[4] 惑星グリー・アンセルムに生まれた。[1] やがて彼はプロの泥棒となり、仲間たちとともに銀河系各地で数々の強奪作戦を計画し、実行に移した。[3] 帝国時代、人間のヴァルとアルデニアンのリオ・デュラントがベケットの宇宙船泥棒クルーに参加していた。ヴァルは仲間にすらフルネームを明かさなかったが、彼女の父親が音楽家で、名前が楽器のヴァラコードにちなんで名づけられたことを知ったベケットは、いつか彼女のためにヴァラコードを弾けるようになりたいというジョークを口にするようになった。元軍人のリオは犯罪者になりたての頃にベケットと出会い[1]、ベケットやヴァルのスピーダーを盗もうとしたこともあったが[5]、やがて一緒に危険な仕事をこなす仲間になった。またベケットは悪名高い賞金稼ぎオーラ・シングを殺した男として知られていた。彼は二丁のブラスターでシングを仕留めたと噂されていたが、本人はそれを否定も肯定もせず[1]、あくまで自分は“押しただけ”で、シングの死因は落下だと語るばかりだった。[2]
ベケットとヴァル、リオは3人で様々な場所を訪れた。ある時、リオが海の怪物に食われた後、その喉の中から血まみれで脱出したことがあった。ベケットはリオを海岸まで連れ戻し、その夜は焚火を囲みながら3人で笑い転げた。またある日、仕事の祝杯を挙げるため仲間と一緒にバーを訪れたベケットは、そこで出会った女性にちょっとした親切心を見せた。この女性の正体は、花婿を探すため銀河の果てからやってきた女王だった。女王はベケットを気に入り、2体の警護ドロイドを使って彼を誘拐してしまった。ヴァルはベケットを取り戻すため賄賂や取引を駆使し、女王の闘士と決闘するチャンスを得た。フェアな勝負をするつもりなど毛頭なかったヴァルは、爆発物を闘技場に持ち込んで爆発させ、武器を奪ってベケットと一緒に強行突破した。その日の夜、ベケットは二度と自分のそばを離れるなとヴァルに告げ、女王からくすねたトニレイ・ワインを彼女と一緒に飲んだ。[5]
数々の逸話[]
ベケットのクルーはたびたび惑星ヴァンドアのフォート・イプソにある“ロッジ”で目撃された。ベケットたちがロッジの夜間バーテンダーである“ミッドナイト”ことティヴォーチェ・ビルレと初めて知り合った日、とある賞金稼ぎ志願者がベケットを捕まえようとした。しかしヴァルがこの男を撃退し、取り上げたブラスターをミッドナイトに渡した。ベケットたちはロッジの常連客というほどではなかったが、それ以降も数か月おきにロッジに姿を現しては、銀河帝国の活動を嗅ぎまわった。ミッドナイトはベケットのクルーがやり遂げた数々の仕事の逸話を耳にしていたが、その内容を本人たちに直接尋ねたことは無かった。[6]
10 BBY以前、ベケット率いるギャング団はベルリアン検問所で数週間にわたる作戦を展開し、帝国の補給船を何隻も強奪した。その結果、3名の帝国顧問が問題解決の必要性を訴え、銀河皇帝シーヴ・パルパティーンの命令でオーメドン大将軍がベルリアン作戦区域に派遣されることになった。しかしそれこそがベケットの狙いだった。一連の作戦は、オーメドンの警備を手薄にするためにベケットが仕組んだことだった。ベケットたちは整備労働者に変装して検問所で待ち伏せし、オーメドンによる視察が始まってから15分後にはオーメドンのシャトルを奪い、彼の出発地であるファウンドリーへ旅立っていた。一行は大将軍の進入許可コードを使って彼の個人用ドッキング・ベイに着陸し、実験的な偏向シールド発生装置技術を盗み出した。オーメドンが検問所の視察を終えてシャトルの在りかを尋ねる頃には、ベケットのクルーはすでに銀河系の反対側におり、クリモラ・シンジケートに仕える泥棒たちとの取り引きを開始していた。[6]
他にもミッドナイトが聞いた話によると、ベケットのクルーは旧共和国時代のナビゲーション・ブイを使って帝国の補給艦隊をロン・ショールズにおびきよせ、転売用の燃料を抜き取ったという。またセレスティアル・ウェイクの外縁で3か月にわたってマイニング・ギルドの鉱石船を妨害したこともあった。ブナ・サウンドの強奪事件やマイレンヘルム詐欺もベケットたちの仕業である。[6]
ケイト・ニモーディア[]
10 BBY以前、ベケットのクルーは惑星ケイト・ニモーディアでレールクローラー・コンヴェイエクスの貨物を強奪する計画に着手した。ヴァルがザラのプラットフォームで盗んだ貨物箱から入手した情報により、犯罪王ドライデン・ヴォスの印が押されたクリムゾン・ドーン・シンジケートの荷物の運搬予定が判明したのである。この時点でベケットのクルーはパースワールド・セキュリティから指名手配されていたが、彼らはお構いなしに作戦を進め、ブライズ・タロンとターコ=セ間の線路で列車を襲撃する計画を立てた。手始めに、ベケットはモン・カラマリのツスカに見張りの役目を任せた。本当にクリムゾン・ドーンの貨物なら、盗賊を警戒して護衛をつけているはずだと考えたベケットは、マクロバイノキュラーで護衛を確認できなかったら計画中止の連絡をよこせとツスカに命じた。[7]
ツスカは護衛がいないと報告したが、ベケットは彼の言葉を疑った。ベケットはファイバーコードを使って貨物船からコンヴェイエクスに飛び降り、列車の連結器に向かって前進した。しかしその時、コンヴェイエクスが時速200キロメートルで走っているにも関わらず、ベケットはスウープのエンジン音を耳にした。エンフィス・ネスト率いるクラウド=ライダーズが数十台のスウープ・バイクで姿を現したのである。リオが貨物船の角度を変え、ヴァルがキャノンで狙撃するあいだ、ベケットは必死で列車にしがみついた。ベケットたちは一番後ろの車両に貨物クローを取り付けて街に着く前に奪い去る予定だったが、ベケットが見たところ、ネストたちは線路を破壊して列車を奈落に沈めるつもりであることがわかった。ベケットはやむを得ず眼下の水面に飛び込むことになったが、この時初めてケイト・ニモーディアの水が酸性であることを知った。ベケットは酸で味覚を焼かれ、クルーの借金はこの任務の失敗で3倍となった。ベケットは今回の経験から、リスクの高い作戦に資金をつぎ込むと、愚かなミスをきっかけに全てを失うことになるという教訓を得た。[7]
またベケットはヴァルがザラで貨物箱から盗みを働いた際、『スマグラーズ・ガイド』と呼ばれる日誌も手に入れていた。海賊女王マズ・カナタに起源を持つこの日誌は、直前の所有者であるキーラを含む様々な犯罪者の手を渡り歩き、そのつど雑多な情報が書き加えられていた。ほかの多くの所有者たちと同じく、ベケットも自分の日記を本に書き加え、ケイト・ニモーディアの失敗談を記録した。しかしベケットはケイト・ニモーディアのザラにいた時、女泥棒“バンディット・ビリー”によって荷物をすり替えられ、ヴァラコードと一緒に『スマグラーズ・ガイド』を盗まれてしまった。[7]
IDチップ争奪戦[]
やがてベケットのクルーは多額の借金を返すためにクリムゾン・ドーンと手を結び、ドライデン・ヴォスから仕事を引き受けるようになった。[8] 11 BBY[9]、クリムゾン・ドーンから請け負ったとある仕事で大きなヘマをしでかした後、彼らはヴォスを名乗る者から秘密メッセージを受け取り、ドゥヴォラッドという名のパントランの男から未記載のIDチップを奪ってくるよう命じられた。当時、銀河帝国による通商ルート取り締まり強化の影響で空のIDチップの価値が跳ね上がっていたのである。ベケットとリオ、ヴァルは惑星ホヴンIVを訪れ、船名すら不明のドゥヴォラッドの宇宙船を見つけるために芝居を打った。リオはドゥヴォラッドを始めとする住民たちが集まる街の酒場に潜り込み、サバックの賭けに参加した。そこへ“死の司祭”に扮したベケットが現れ、リオの首をフォースで締める演技をした。迷信を信じる人々があわてて逃げ出す中、ヴァルはドゥヴォラッドのポケットに追跡装置を忍ばせることに成功した。[8]
リオがギャンブラーたちが置いていった金をかき集める間、ベケットは店のヴァラコードを弾いたが、ヴァルに急かされてドゥヴォラッドの追跡を開始した。一行が港に到着すると、ドゥヴォラッドは追跡に気付いてトグナスの操縦する水上スピーダーに乗り込んだ。ベケットは銃撃をかわして1人でスピーダーに飛び乗り、ドゥヴォラッドの手からブラスター・ピストルを叩き落として殴り合いを始めた。ドゥヴォラッドは何とかブラスターを拾い上げたが、ベケットのキックで機体後部に倒れ、服が稼働中のエンジンに挟まってしまった。ドゥヴォラッドがトグナスにエンジンを停止させて降伏すると、ベケットは別のスピーダーに乗ってきたヴァルやリオと合流し、チップを運んでいる船の場所を聞き出そうとした。ところが次の瞬間、問題の船が海中から姿を現し、形勢逆転した。[8]
ドゥヴォラッドはベケットたちにブラスターを向け、自分を売ったのは誰か尋ねた。しかしベケットはそのすきに手首を口で噛み切り、流れ出た血を海中に垂らした。彼の目論見通り、巨大な水生クリーチャーが血に誘われて姿を現し、スピーダーやスターシップに襲い掛かった。ヴァルは逃げるべきだと提案したが、ベケットはリオの援護射撃を受けながら飛び出し、クリーチャーの餌食となったドゥヴォラッドをよそに、スターシップに乗り移った。彼は船内で乗組員と戦いながら船長室にたどり着き、IDチップの入った箱を見つけた。両手で箱を持ちながら船外に出ようとした時、ベケットはタルパイニの乗組員に見つかったが、タルパイニが撃ったブラスター弾は箱に当たって跳ね返り、本人の胸に命中した。船がクリーチャーによって破壊される前にヴァルとリオのスピーダーに戻ったベケットはパイロット・ドロイドのD-1Gに連絡を取り、待機させていた<ランパート>を呼び出した。[8]
ホヴンIVから脱出する際、リオはヴォスに差し出すIDチップを少しちょろまかしてはどうかと仄めかした。ベケットもリオと同様、借金を返すためなら無理も辞さない考えだったが、ヴァルの反対に遭い、結局リオも折れた。ヴォスとの待ち合わせ場所に指定された宇宙ステーション・ムント・オントダルへ航行中、ベケットは不機嫌なヴァルをなだめ、ピンハネを提案したのは、クリムゾン・ドーンから足を洗いたいためだと弁解した。間もなく<ランパート>はムント・オントダルに到着し、パッド19に駐機した。ベケットは74-Zスピーダー・バイクに乗って船の外に出たが、クラウド=ライダーズによる待ち伏せに気付いた。ベケットはブラスター・ピストルで敵を2人射殺すると、スピーダー・バイクから飛び降り、ロケット・ランチャーを装備している敵に激突させた。ところが次の瞬間、エンフィス・ネストがエレクトロリッパー・スタッフで背後からベケットを殴り倒し、IDチップのありかを尋ねた。船内にいたヴァルとリオもクラウド=ライダーズに捕まり、船外へ連れ出された。[8]
ベケットはドライデン・ヴォスが間もなくここに来るとネストを脅したが、ヴァルはネストこそ今回の任務を依頼した張本人だと気づいた。ネストは通信を偽装してヴォスを装い、自分の手を汚すことなくベケットたちにIDチップを回収させたのである。再度チップのありかを問われた際、ベケットは隠し持っていた遠隔装置で<ランパート>を爆破した。周囲にいた者たちは敵味方を問わず吹っ飛ばされ、ベケットは今回こそネストにとどめを刺そうとブラスターを構えた。しかしヴァルはベケットとリオの手を引き、生き延びることが先決だと諭した。ベケットたちはパッド19を後にし、現場に駆け付けたストームトルーパーには闇市場の粗悪燃料が爆発でも起こしたのだろうと嘘をついた。一行は帝国軍に目を付けられずに済んだものの、今回の任務で金も船も失うことになってしまった。結局、彼らはまたしても“死の司祭”のペテンに手を染めることになり、ベケットは街で出会ったサラスタンに手持ちのクレジット・チップを渡して、変装に必要なローブを譲ってもらった。[8]
ハン・ソロとの出会い[]
ミンバンの戦い[]
10 BBY[1]、ベケットのクルーはドライデン・ヴォスから帝国の精製済コアクシウムを強奪する作戦を与えられた。コアクシウムを運び出すには運搬船が必要だったため、ベケットは惑星ミンバンの戦場からATホーラーを盗み出す計画を立てた。[2] 彼はミンバンにいるコルソという名の人間と取り引きし、帝国地上軍への潜入や軍服調達を手伝ってもらう代わりに、ミンバンを去るときは彼を一緒に連れて行くことを約束した。またベケットはヴァルやリオに「ミンバンへ飛ぶが戦闘は避ける」と説明していたが、結局ミンバニーズ解放軍と帝国地上軍の苛烈な戦いの真っただ中へ飛び込むことになった。彼らは泥だらけの戦場でミンバニーズと戦いながら、ATホーラーが手に入るキャンプ・フォワードの場所を探った。[5]
ベケットとリオ、ヴァル、コルソは[2] 第224帝国軍機甲師団[1] の兵士たちが身を潜めている塹壕に飛び込んだ際、若きマッドトルーパーのハン・ソロと出会った。ソロはベケットが戦死した[2] スタッツ[1] 少佐の命令と別の方向へ行こうとしていることを知り、彼らの会話に割って入った。ベケットが身に着けていた軍服の記章が大尉のものであったため、少佐亡きいま、成り行き上ベケットが周囲のトルーパーたちの指揮を執ることになってしまった。ベケットは即席の作戦を立てて塹壕から飛び出し、スワンプ・トルーパーたちとともに戦闘地帯を進んだ。[2] 大柄なコルソはベケットの盾となって連射式ブラスターを掃射したが、敵の集中砲火に遭って倒れた。ベケットとソロはコルソのもとへ駆けつけ、最寄りの塹壕に彼を引きずり込んだ。しかしコルソは息絶えており、ベケットは亡骸の瞼を閉じると、キャンプ・フォワードへの前進を再開した。[5] キャンプに到着した後、ベケットはしつこく話しかけてくるソロに「こんな場所からは一刻も早く出ろ」とだけ忠告し、どこの隊の所属かという質問は無視した。[2]
ベケットたちはキャンプ・フォワード飛行場へ移動し、AT-DTウォーカーの運搬機であるATホーラーの出撃スケジュールが30分おきであることを確認した。するとまたしてもソロが彼らに話しかけ、自分も一緒に連れて行ってほしいと頼んだ。ソロはベケットたちが偽軍人であることに気付いており、自分はパイロットとして役に立つと売り込んだ。TIEパイロットになるはずがカリダの帝国アカデミーから追い出された過去を持つソロは、故郷コレリアへ帰るための手段を探していたのだった。ヴァルはブラスターでソロを始末しようとしたが、ベケットは首を折った方が静かに殺せると指摘した。しかしソロは食い下がり、もし頼みを聞かないなら偽軍人の存在を中尉に告げ口すると脅した。[2] チャク=ルートを噛みながら[5] 話を聞いていたベケットはソロの脅迫を笑い飛ばし、自ら[2] アレイユス・ボランディン[10] 中尉を呼びつけ、ソロを脱走兵として突き出した。ベケットはソロを連行していくミンバン・ストームトルーパーたちに、彼の言うことは全て嘘だから信じてはいけないと付け加えた。[2]
ATホーラーを手に入れて離陸を開始した直後、ベケットは泥まみれになったソロがウーキーのチューバッカを連れて再び飛行場に現れ、こちらに手を振って呼びかけていることに気付いた。ソロは帝国の囚人であるチューバッカの餌にされかけたところを、なんとかウーキーを説得して味方につけ、一緒に逃げてきたのである。リオはソロを気に入り、ウーキーは仕事の役に立つと助言した。一方、ヴァルは問題外だと反対したが、ベケットは泥だらけの2人をクルーに加えることに決め、ATホーラーを再び降下させた。[2] ベケットは船に乗り込んできた2人に惑星ヴァンドア]のイリディウム山脈へ向かうことを告げると、ヴァルと対面する前にシャワーで体をきれいにしておくよう命じた。[5]
ヴァンドアの強奪作戦[]
- ベケット 「これで借金を返して、グリー・アンセルムに戻れる。俺はついにヴァラコードの弾き方を習えるわけだ」
- ヴァル 「ベイビー、あんたがヴァラコードの弾き方を習う日なんて来ないよ」
- リオ 「そうそう。音痴だからな」
- ―作戦前夜、ベケットのクルーの会話[出典]
氷の惑星ヴァンドアに到着したベケットのクルーは、イリディウム山脈の山中深くにキャンプを張り[5]、作戦決行日である翌日に備え、コアクシウムが運ばれる予定のコンヴェイエクス線路をエレクトロモノキュラーで遠くから偵察した。ベケットは作戦の手順を確認し、もしセキュリティ・ビームに引っかかったら[2] クリスピン帝国保管庫を守る[5] 11-3Kヴァイパー・プローブ・ドロイド[11] が起動され厄介なことになると警告した。しかしヴァルは帝国よりも、今回もまたエンフィス・ネストに計画を邪魔されるのではないかと危惧していた。ベケットは積み荷の情報を知っているのは自分たちだけだと請け合ったが、ヴァルは納得せず、ソロのようなアマチュアではなくザン姉妹やボスクの助けを借りるべきだったと文句を言った。[2]
その日の夜、ベケットのクルーはキャンプで焚火を囲み、食事をとった。ベケットはここでもヴァルをなだめ、この仕事で借金を完済したらグリー・アンセルムに戻り、ついにヴァラコードの弾き方を習えると語った。[2] ようやく場の緊張が緩んだ後[5]、ソロがコレリアに残してきた恋人の存在を明かすと、ヴァルは誰しも1人では生きていけないと語り、ベケットにキスをした。続いてチューバッカも身の上話を披露した後、ソロはブラスターを手でくるくる回すやり方を教えてくれとベケットに頼んだ。しかしベケットは、いま教えておくべきことは自分の命令に言われた通り従うことだけだと告げ、ライフル用アタッチメントを外したDL-44重ブラスター・ピストルをソロに与えた。[2] 2人きりになった後、ベケットとヴァルは仕事が成功した後のことについて話し合った。ヴァルは策を練るのが好きなベケットが身を落ち着けることなどできないと考えていたが、ベケットはヴァルとの付き合いにも策が必要だと答え、隠遁生活への意欲を見せた。[5]
翌日、クルーは強奪計画を実行に移し、ベケットとソロ、チューバッカはリオが操縦するATホーラーから走行中のコンヴェイエクスへ飛び降りた。ベケットは標的の車両のハッチをフュージョンカッターで開くと、情報通り大量のコアクシウムが積み込まれていることを確認した。その直後、盗賊に気付いた帝国のレンジ・トルーパーが姿を現し、列車の上で銃撃戦が始まった。ベケットがハッチを盾にして攻撃をしのいでいる間に、ソロとチューバッカは連結器を外し、トルーパーのいる後部車両を切り離すことに成功した。しかしベケットたちが車両を持ち上げるためのケーブルを接続していた時、エンフィス・ネスト率いるクラウド=ライダーズのスウープ集団が出現した。彼らは獲物の横取りを企て、貨物車にハープン・ガンを打ち込んだ。ベケットはブラスターでスウープを1台撃墜したが、リオはATホーラーに乗り込んできたライダーとの撃ち合いで致命傷を負った。ソロはリオの代わりを務めるためホーラーに戻り、ベケットはケーブルの接続を再開しようとしたが、車両に降りてきたネストが彼を妨害した。ベケットはネストとの戦闘でブラスターを2丁とも失い、エレクトロリッパー・スタッフのキネティック・エネルギーで吹っ飛ばされてしまった。[2]
線路の先の橋では、ヴァルがヴァイパー・ドロイドに追い詰められていた。ベケットはすぐに橋から降りるよう言ったが、ヴァルは自らを犠牲にして作戦通り橋を爆破した。チューバッカは間一髪で貨物車と前方車両の連結器を外し、ベケットとチューバッカの乗る車両は爆破された橋から脱線して、ATホーラーとクラウド=ライダーズのスウープ双方に持ち上げられる形となった。ベケットは揺れる車両にしがみつきながら、絶対にケーブルを切るなとソロに命じた。クラウド=ライダーズもコアクシウムを手放そうとせず、ネストはケーブルを放すか死ぬかの二択をベケットに迫った。結局、ソロはベケットの言うことを聞かず車両を切り離し、ベケットはチューバッカと一緒にケーブルに捕まりながらソロを臆病者と罵った。一方、ネストたちもスウープだけでは車両を支えることができず、結局コアクシウムは山岳地帯に落下して大爆発を起こした。ATホーラーの船内ではリオも息絶えており、ベケットはクリムゾン・ドーンの仕事をしくじったばかりか、2人の仲間を失ってしまった。[2]
最後の旅[]
ドライデンの怒り[]
- 「逃げよう。どのみち俺は脱走兵だ。同じことだ」
「同じじゃない。帝国はたかが脱走兵を追うのに執行官のチームを送り込みはしない。だがドライデン・ヴォスはやる」 - ―ハン・ソロとトバイアス・ベケット[出典]
雪山に降りた後、ベケットはヴァルとリオのために墓を作った。ベケットは近づいてきたソロを殴り、ヴァルの言う通り彼をチームに入れるべきではなかったと罵った。ベケットはここで初めて、今回の作戦はクリムゾン・ドーンから請け負った仕事だったことをソロとチューバッカに明かした。約束のコアクシウムが手に入らなかったことが知られれば殺されるかもしれないと語るベケットに、ソロは逃げるべきだと提案した。しかしベケットは、帝国は逃亡者1人のために執行官のチームを送り出すことはないがドライデン・ヴォスはやると告げ、直接会って話をつけにいくしかないと答えた。ベケットはヴォスに顔が知られていないソロはついて来るべきではないと助言したが、ソロはまだ金もうけのチャンスがあることを確認すると同行を決意し、チューバッカも追従した。ベケットは殴ったことを謝ると、ソロとチューバッカの3人でフォート・イプソへ向かった。[2] またベケットは道中で見かけた毛むくじゃらのクリーチャーがコドヨクという名前であることをソロに教えた。極寒の平原を進んだ一行は、フォート・イプソの荒地に停泊するヴォスのヨット[5] <ファースト・ライト>[1] にたどり着いた。[5]
宇宙ヨットの入り口で、手元に残った唯一の武器である[5] 折りたたみ式ブレード/フュージョンカッター[1] をハイロボン・エンフォーサーのトート・ラに差し出した後、ベケットはソロとチューバッカを連れてターボリフトに乗り、上階のパーティ会場へ移動した。ベケットはコンシェルジュのマーゴに出迎えられ、ヴォスが[2] ダイルズ・アネヴィ[1] 総督と会見中であることを伝えられた。ベケットはソロに、ここに居る誰とも口を聞くなと忠告したが、ソロは思いがけずキーラと再会を果たした。ヴォスの副官にして、ベケットとも顔なじみのキーラは、ソロのコレリア時代の恋人だったのである。間もなく総督との会見を終えたヴォスがパーティ会場に現れ、ベケットたちを書斎へ通した。ヴォスはベケットが仕事に失敗したことに怒っており、エンフィス・ネストの介入は想定外だったという言い訳も聞き入れなかった。失敗の代償として命をとられることを避けるため、ベケットは約束の物を他から手に入れてくると提案したが、精製済みコアクシウムはスカリフやマーシー・アイランドといった帝国の貯蔵庫からしか手に入らないとキーラに否定された。するとソロが口をはさみ、精製前のコアクシウムを手に入れればいいと発言した。[2]
精製前のコアクシウムが保管されているケッセルのスパイス鉱山はパイク・シンジケートの管轄下にあるため、ヴォスは犯罪組織間の抗争につながるとして案を却下し、ハイロボンの手下にベケットらを処刑させようとした。しかしベケットとソロは、自分たちはパイクと何のしがらみも無ければ、クリムゾン・ドーンのために働いていることも知られていないと訴えた。するとヴォスは間一髪のところで処刑を中止し、キーラと共に可能性を再検討し始めた。精製前のコアクシウムは極めて不安定だが、ベケットとチューバッカはサヴァリーンにある帝国管轄外の精製所へ運び込むアイデアを提案した。ヴォスはこの作戦を承認し、お目付け役としてキーラをベケットたちに同行させることに決めた。ベケットたちが書斎を去ろうとした際、ヴォスは次も失敗したら後は無いと警告した。ターボリフトに乗った後、ベケットは必要な道具は自分が集めると名乗りを上げ、ソロとチューバッカはキーラを頼りに宇宙船を調達してくることになった。[2]
フォート・イプソに到着したベケットたちは、彼らが強奪任務に失敗したことを知る人々から白い目で見られた。[5] ソロは快速のYT-1300軽貨物船<ミレニアム・ファルコン>を手に入れるためフォートの“ロッジ”でキーラの知り合いの密輸業者ランド・カルリジアンとサバックの対決に臨んだが、敗北した。キーラたちはケッセルの仕事にカルリジアン本人を誘う必要に迫られ、報酬の交渉に臨んだ。ベケットは遅れて交渉に加わり、25パーセントの分け前でカルリジアンを丸め込んだ。ベケットたちはカルリジアンとその一等航海士であるL3-37と一緒に<ファルコン>の駐機場所へ向かったが、船の着陸ギアには拘束装置がかけられていた。ベケットはチューバッカに装置を外させることを条件に、カルリジアンの分け前をさらに5パーセント削った。[2]
ケッセルのスパイス鉱山[]
<ミレニアム・ファルコン>でケッセルへ向かう旅の途中、ベケットは船内のテーブルでチューバッカとデジャリックに興じ、マンテリアン・セイヴリップでキンタン・ストライダーを倒した。ベケットは癇癪を起こすチューバッカをなだめ、数手先を読んで行動することが肝要だと諭した。するとそこへソロが現れてキーラの居場所を尋ねたため、ベケットは“人の行動は読みやすい”と答えて笑った。その後、ベケットがソロを呼びに行った時、ソロはクローゼットの前でキーラとキスをしていた。キーラと離れた後、ベケットはあの女と親しくするのはやめた方がいいとソロに忠告し、キーラのせいでチームの輪が乱れると告げた。続けてベケットは、誰もが自分を裏切ると思えば決して失望することはない、という人生の信条をソロに教えた。ケッセル宙域に到着した<ファルコン>がケッセル・ランを通ってアカディーズ・メイルストロムを通過しているとき、ベケットはコックピットで作戦を再確認し、勝手な行動はとらないよう仲間たちに念を押した。[2]
<ファルコン>がケッセルのスパイス鉱山に到着すると、ベケットたち一行は通商ルート割り当ておよび収益化連合の代表としてパイク・シンジケートのカポ・クエイ・トルサイトと対面した。連合の“副提督付き行政次官補オクサナ・フローレン”を名乗るキーラがトルサイトと会話し[2]、タンテル・アーマーを身に着けて賞金稼ぎの格好をした[5] ベケットは、フローレンの部下“トゥール”(Tuul)として振舞った。キーラは奴隷とスパイスの交換をトルサイトに持ちかけ、サンプルとしてソロとチューバッカを差し出した。するとパイクのカポは交渉に応じ、キーラとベケット、L3-37を鉱山のコントロール・センターへ案内した。キーラが奥の部屋でトルサイトと話し合うあいだ、ベケットはドアの外で待機することになった。間もなく、別の場所へ連行されていたソロとチューバッカがパイク・センチネルに抵抗したため、コントロール・センターのスタッフが異常事態に気付いた。その瞬間、ベケットは持っていたバイブロ=アックスをトルサイトの護衛に投げ渡すと、即座に2丁のブラスターを引き抜いてセンター内のセンチネルたちを始末した。一方、キーラはテラス・カシの技を使って独力でトルサイトを倒した。[2]
コントロール・センターを制圧したベケットたちは、コンピューター端末を使ってソロとチューバッカに指示を出し、コアクシウムの保管場所へ向かわせた。その際、L3-37が施設で働く[2] WDDアドミンメク・ドロイド[12] DD-BDの制御ボルトを外してやったことがきっかけとなり、鉱山で酷使されていたドロイドと生きた奴隷たちが連鎖的に解放されていった。ベケットはコントロール・センターの増援に駆け付けたセンチネルたちを撃退しつつ、ソロが貯蔵庫の見張りを倒してコアクシウムを運び出す様子を、キーラと共にモニター越しに見守った。センターでの目的を果たしたベケットたちは、自由になった奴隷やドロイドの大群衆に紛れて<ファルコン>の駐機場を目指した。途中、コンテナを運んでいるときにセンチネルに見つかってしまったソロがベケットに連絡を取って助言を求めたが、ベケットは当初の作戦に反して「勝手にやれ」とだけ答えた。結局ソロはチューバッカの助けで窮地を脱し、大混乱の駐機場でベケットたちと合流した。彼らは<ファルコン>にコアクシウムを積み込み終えたが、L3-37が銃撃で破壊され、助けに行こうとしたカルリジアンが腕を負傷してしまった。[2]
全員が船に乗り込むと、<ファルコン>はソロの操縦でケッセルから離陸した。しかし騒ぎを聞きつけた帝国のインペリアルI級スター・デストロイヤーが軌道を封鎖していたため、<ファルコン>はケッセル・ランに入ることができなかった。ベケットはスター・デストロイヤーから出撃したTIEファイターや[2] TIEブルート[13] を撃退するため銃座につき[2]、トムラルRM-76重レーザー砲[1] を操作した。[2] ソロは近道をするためメイルストロムの中に突っ込み、追っ手はまだいるかベケットに尋ねた。ベケットは敵が迫りくる様を“カラクのラシュノルド”や“ギングルソンの雨”に例えたが、どちらもソロに伝わらなかった。ベケットはレーザー砲で複数のTIEを撃墜し、体当たりで1機撃破したソロを褒めたたえた。しかし最後のTIEブルートの攻撃でベケットの砲台が破壊され、<ファルコン>は反撃手段を失ってしまった。そこでソロはカーボンバーグの表面を滑走し、凍ったカーボナイトの粉末を敵機に浴びせることでTIEを破壊した。[2]
敵をすべて倒した後、カルリジアンとキーラはL3のナビゲーション・データを<ファルコン>の航法コンピューターに接続した。この試みは成功し、<ファルコン>の現在位置がモー密集地帯のそばであることが明らかになった。間もなく<ファルコン>は巨大な[2] スマ=ヴァーミノス[1] と遭遇し、追撃でダメージを負った。ソロは<ファルコン>をモーに接近させ、スマ=ヴァーミノスを重力井戸に落とすことに成功したが、<ファルコン>も重力に囚われてしまった。キーラとカルリジアンは重力圏を抜けるのに必要な加速を得る方法としてコアクシウムを反応炉に注入するアイデアを思いつき、ベケットはそれを実行に移すためコックピットを飛び出した。彼は密輸用コンパートメントからコアクシウムを抽出すると、ソロの合図に合わせてエンジンに注入した。その結果、<ファルコン>の亜光速エンジンは一瞬停止したのち、再点火して船体を重力井戸から飛び出させた。[2]
サヴァリーンの決闘[]
- 「賢明な行動だったぞ、坊や。今回だけはな。でなきゃ俺はお前を殺していた」
- ―ハン・ソロに対し、トバイアス・ベケット[出典]
<ミレニアム・ファルコン>はぼろぼろになりながらメイルストロムを抜け出し[2]、サヴァリーンのナコティック・コーストにあるビス精製所[1] にたどり着いた。一行は不安定なコアクシウムを船外へ運びだし、住民のサヴァリアンの助けを借りて精製することに成功した。[2] ベケットはサヴァリアンの作業長との交渉に臨み、身振り手振りで自分たちの要求を伝え、納得させた。[5] 精製所での目的を果たした後、ベケットたちはヴォスがやってくるまでナコティック・コーストの村で一休みすることにした。しかしベケットが[2] サヴァリーン・ブランデーの職人ケンホルト・ランサード[1] に話しかけた時、エンフィス・ネストが精製所の外から彼の名を呼んだ。ネストとクラウド=ライダーズはヴァンドアで<ファルコン>に発信機を仕掛けており、コアクシウムを横取りするためベケットたちを追いかけてきたのである。[2]
ベケットたちが外に出ると、ネスト率いるクラウド=ライダーズが武器を構えて彼らを包囲していた。ベケットは武器に手を伸ばしたソロを制止してネストと会話しようとしたが、ソロが割って入り、<ファルコン>に30人の仲間が乗っているとハッタリをかました。ところが船内で待機していたカルリジアンがベケットたちを見捨てて<ファルコン>のエンジンをかけ、ひとりで逃げ去ってしまった。ソロが観念して引き下がると、ベケットは自分たちを殺せばクリムゾン・ドーンの報復を受けることになると仄めかし、ネストたちを“略奪者”呼ばわりした。ところがネストはベケットの前でマスクを脱いで素顔を明かすと、一行を村へいざない、クリムゾン・ドーンをはじめとする5大シンジケートがサヴァリアンや自分たちに対して行った残酷な仕打ちを語って聞かせた。コアクシウムを手に入れたらどうするのかというベケットの問いに、ネストは反撃のために使うと答え、自分たちは“略奪者”ではなく“同盟”だと告げた。[2] この言葉を聞いたベケットはネストに背を向け、ソロたちを残してその場を歩み去った。[5]
その後、ネストの話に影響を受けたソロは[2] ソウルティース[1] が並ぶ砂丘で海を見ているベケットに近づき、ヴォスにコアクシウムを渡してはならないと告げた。ソロはヴォスを出し抜く計画を説明し、仲間に加わらないかと持ちかけたが、ベケットは死ぬより逃げるほうがマシだと断った。ベケットは遠くで自分たちを見守るネストに手を挙げて別れの合図を送ると、砂丘を降りはじめた。別れ際、ベケットはもし生き延びることができたらタトゥイーンで会おうとソロに告げ、そこで大物のギャングスターが手下を集めていることを教えた。ベケットはギャングスターの仕事で借金を返すことができたら引退してヴァラコードを習うつもりだと語ると、ソロの前から姿を消した。[2]
しかしベケットは“誰も信じるな”という自らの教訓を実践し、若き仲間を見捨ててドライデン・ヴォスとの関係を維持することに決めた。[3] ベケットは先んじてヴォスに連絡を入れ、ソロが犯罪王を出し抜いて金だけ巻き上げ、本物のコアクシウムをネストに差し出すつもりであると伝えた。ベケットは遅れて<ファースト・ライト>に到着すると、裏切りを謝りながらソロにブラスターを向け、彼が“偽物”のコアクシウム容器に隠したブラスターを掴むのを阻止した。ヴォスはすでにエイモン・グレム率いる傭兵部隊をサヴァリーンの村に送り込んでおり、しばらくするとグレムから荷を確保したとの報告が入った。しかしソロもまたベケットから教わった“人の行動は読みやすい”という教訓に従い、ベケット本人の裏切りを予期していた。村のコアクシウム容器が空であることが判明した直後、グレムのチームはクラウド=ライダーズの待ち伏せで制圧された。ヴォスの傭兵部隊が村でほぼ全滅した現状と、目の前にあるコアクシウムこそ本物であるという新事実を踏まえ、ベケットは即座にヴォスの護衛2名を撃ち殺し、場の支配権を握った。[2]
激怒するヴォスをよそに、ベケットはソロを脅してコアクシウムを容器に戻させると、チューバッカに荷物運びを命じた。ヴォスはこれが人生最後の過ちとなるとベケットに警告したが、ベケットは“そう悲観的になるな”と返し、チューバッカと一緒にターボリフトに乗って去っていった。ベケットが姿を消した直後、ソロとヴォス、キーラの死闘が始まり、ヴォスは命を落とした。ソロはすぐさま独りでベケットの後を追うと、プナコティック・コーストの砂浜で先回りし、チューバッカと一緒に歩いてくるベケットを待ち受けてブラスターを向けた。ベケットはヴォスを殺したのがソロではなくキーラであることを言い当て、彼女の行動はソロを想ってのことではないと告げた。ベケットが会話を引き延ばしながらブラスターの引き金にかけた指に力を込めた瞬間、ソロが先に彼の胸を撃ちぬいた。ベケットがブラスターを落としてその場に倒れこむと、ソロが駆け寄って彼の体を支えた。ベケットは痛みにあえぎながらソロの行動を褒め、ヴァラコードを習いたいというのは本気だったと告げて息絶えた。[2]
その後[]
- 「ベケットが言ってた。大物ギャングが手下を集めていると」
- ―ハン・ソロ[出典]
ソロがひとりでベケットを追い、彼を殺すまでの間に、キーラはクリムゾン・ドーンの影の指導者である元シス卿のモールに連絡を取っていた。彼女はヴォスがトバイアス・ベケットによって殺されたと虚偽の報告を行い、他の仲間もベケットに殺され、コアクシウムは奪われたと告げた。モールは裏切り者ベケットとその協力者に対処するため惑星ダソミアに来るようキーラに命じた。しかしキーラがモールの命令に従い<ファースト・ライト>を発進させた時点で、ベケットはすでにソロに殺されていた。[2]
その後、ソロはベケットらと協力して手に入れたコアクシウムをネストに引き渡した。のちにソロとチューバッカは惑星ヌミディアン・プライムでランド・カルリジアンとサバックの再戦に挑み、ついに<ミレニアム・ファルコン>を勝ち取った。新しい船で出発する際、ソロはベケットから聞いた話を思い出し[2]、大物ギャングが手下を集めているという惑星タトゥイーンに針路をとった。[2][5]
ベケットの死後、ソロはベランという名の女性に雇われ、呪われた惑星レンデルへ旅した。ベランの依頼は、レンデルに住む芸術品収集家にトゥーカの石像を届けるだけで報酬100万クレジットを支払うという簡単なものだったが、ソロはレンデルのイバラの森を進んでいるときに「仕事の話がうますぎるときは……」という亡きベケットの言葉を思い出した。しかしソロはベケットの教訓を最後まで言い終える前にイバラに躓いて転んでしまった。[14]
人物[]
- 「あんたは自分の問題をわかってるか? 誰もが自分と同じだと思ってることだ」
- ―トバイアス・ベケットに対し、ハン・ソロ[出典]
トバイアス・ベケットは人間の男性で[3]、目は明るいブルー[5]、髪はブロンドだが[8] 10 BBY当時は白いものが混じりはじめていた。[1] 身長は1.78メートル。[3] ヴァンドアの強奪作戦当時、ベケットは髪の毛が薄くなってきていることをリオ・デュラントにからかわれていた。ベケットは両利きだったが、左手を好んで使用した。[1] ベケットはプロの泥棒としてクルーを率い、数々の強奪作戦を立案して実行に移していた。ベケットは常に様々な角度から物を考え、不確定要素に注意を払っており、まずいことが起きたらいつでもブラスターを抜く準備ができていた。[3] 生まれながらのサバイバーであるベケットは、常にさまざまな選択肢を考慮して、相手の行動パターンを分析することで優位に立っていた。[1]
ベケットはハン・ソロよりも用心深い性格で、信頼しているチームの仲間、ヴァルやリオにも本心を打ち明けていなかった。“全員が自分を裏切ると思えば失望することもない”、というのがベケットのモットーであり、新しく仲間に加わったソロに、あらゆる曲がり角に裏切りが待ち受けていると思え、と一度ならず警告した。[1] しかし彼はチームの仲間や、約束を交わした相手に対して忠実な一面もあった。ミンバンの戦いのさなか、帝国の大尉に変装したベケットは成り行きで帝国の歩兵たちを率いることになったが、彼らに職務の遂行と戦略的な行動を求めつつ、無謀な死に飛び込ませないよう配慮した。またベケットは取り引きと友情は別物だと考えてはいたが、約束を果たせぬまま取り引きが終わってしまうことを好まず、コルソがミンバンで戦死した際には、彼は友人ではなかったと割り切りつつ、その死を無念に思った。ソロとチューバッカがATホーラーへの乗船を求めた際、ベケットは死んだコルソの代わりをこんなに早く補充することに罪悪感を覚えつつも、ウーキーは役に立つというリオの意見や、自分たちを執拗に追ってきた若者に対する称賛の気持ちから、彼ら2人を味方につけることに決めた。[5]
ベケットはヴァルと恋仲にあり、彼女との関係を「本当のところは、おれのほうがあいつのものだった」と表現した。[5] ヴァルの父親が音楽家で、彼女の名前がヴァラコードにちなんで名づけられていることを知ったベケットは、いつか彼女のためにヴァラコードを弾けるようになりたいとジョークを言うようになった。[1] ベケットは借金を返したら引退し、グリー・アンセルムに戻って小さな家を買い、ヴァラコードを弾くのが夢だと語っていた。しかしヴァルは、策を巡らすのが好きなベケットが身を落ち着けた生活に満足できるはずがないと考えており[5]、ヴァラコードを習う日など来ないと答えていた。[2] ヴァンドアの作戦の前夜、ベケットは本気で引退を考えているとヴァルに語り、彼女といれば充分に幸せだと告げ、ヴァルも納得した。しかしいざ作戦が始まり、クラウド=ライダーズや帝国のヴァイパー・プローブ・ドロイドと戦闘になった時、ヴァルは仕事の疾走感や逃げるときのスリル、クレジットや仲間たちのことが好きであることを改めて実感し、今回の任務を最後にベケットが隠退することはあり得ないし、自分がそうはさせないと考え直した。[5]
ヴァンドアの仕事を経て、ベケットはソロとチューバッカをチームメイトとして認めたが、キーラに入れ込み過ぎるとチームの輪が乱れるとソロに警告し[2]、そんなことでは自分たちの仕事に向かないと告げた。ソロがメイルストロムで重力井戸に飛び込んだ時、ベケットはヴァルの言う通り、こんな若造に自分の身を委ねるべきではなかったと後悔したが、無事サヴァリーンに到着した頃には、彼のパイロットとしての腕前を認めていた。しかしそれでもなお、ベケットにとってソロはヴァルやリオほど信頼のおける仲間ではなく、“パートナー”と呼べるまでにはまだ長い時間が必要だった。サヴァリーンでソロからヴォスを裏切る計画に誘われた際、ベケットはソロが自らの野心によっていつか死ぬことになるだろうと考え、逃げるよう言い聞かせようとした。ベケットはソロが目を覚まし、自分の限界を悟ることを望んでいたのである。またベケットは、自分とエンフィス・ネストがヴァンドアでそれぞれの仲間を失った事実を踏まえ、これ以上お互い恨み続けても不利益しかないと判断し、ソロの誘いを断った際、遺恨を帳消しにする意味を込めてネストに向かって手を挙げた。[5]
ベケットはソロと自分には共通点があると考えていたが、ソロよりも年配な分、経験からしか得られない自信に満ちていた。[1] 彼はソロの将来を案じつつも、裏切り計画への参加を拒否した後はビジネスと割り切り[5]、ソロよりもドライデン・ヴォスとの関係を選んだ。[3] ソロが二重の裏切りを予期していたことが発覚した時、ベケットは即座に判断を下し、ヴォスに盾突いてコアクシウムの総取りを図った。またソロと浜辺で一対一の対決に臨んだ際、ベケットはキーラがヴォスを殺したことを言い当て、彼女は生き延びるためならなんでもする女だと告げた。これに対しソロは「誰もが自分と同じだと思ってること」がベケットの欠点だと指摘した。その後ソロは先にブラスターの引き金を引くと[2]、ベケットをひとり孤独に死なせるわけにはいかないと考えて駆け寄り、死にゆくメンターを抱きしめた。[5]
技術と能力[]
- 「長年のつきあいじゃないの、ベケット。策を練ってるときが幸せなんだろ」
- ―ヴァル[出典]
トバイアス・ベケットは射撃の名手で、生まれながらのサバイバーだった。[1] 優秀な戦士だったベケットは両手でブラスターを操ることが多かった。[15] ベケット本人は“自分は押しただけだ”と主張していたが[2]、裏社会で囁かれていた噂によれば、伝説的な賞金稼ぎとして知られるオーラ・シングはベケットのピストルによって始末されたという。[16] ベケットは2丁のブラスターをホルスターに収める前に手でくるくると回すことができ、しばしばその腕前をひけらかした。[1] またベケットは状況によってはブラスターを使わずに戦うこともあった。ホヴンIVでは、ドゥヴォラッドを捕まえるために敵の水上スピーダーに飛び移り、格闘戦に臨んだ。[8]
ベケットはミンバンの戦いで多数のミンバニーズをブラスターで仕留めた。ハン・ソロはミンバンで戦うベケットを見て、帝国の軍人らしからぬ軽やかな動きだという印象を受けた。[5] ヴァンドアの強奪作戦では、走行中のコンヴェイエクスの上でレンジ・トルーパーと銃撃戦を繰り広げ、列車のハッチを盾にするなど臨機応変な戦いぶりを見せた。しかしベケットはエンフィス・ネストとの接近戦で圧倒されてブラスターを2丁とも失い、エレクトロリッパー・スタッフで吹っ飛ばされてしまった。ケッセルでは2丁のブラスターで素早くパイク・シンジケートの職員やセンチネルを仕留め、スパイス鉱山のハンガーで発生した乱戦を生き延びた。またサヴァリーンでは、誰も反応できないほどの素早さでドライデン・ヴォスの用心棒を撃ち殺した。しかし彼はソロと最後の対決に臨んだ際、引き金にかけた指に力を込めた瞬間に先手を打たれ、命を落とした。[2]
ベケットはカルリジアンとの交渉で二度に渡って自分の要求を押し通すなど、交渉術に長けていた。ベケットは相手の行動を数手先まで読むことが大切な教訓だと説き、実際にその戦略性を発揮してデジャリックでチューバッカを圧倒した。[2] 策を練るのを好み[5]、あらゆる可能性に備えていたベケットだったが[1]、しばしばエンフィス・ネストのクラウド=ライダーズに出し抜かれ、作戦が失敗に終わることもあった。[2][8] またベケットはスピーダー・バイクを操縦することができた。[8]
装備[]
- 「ベケット、お前何をやっている!?」
「考えてる。そしてその間、ブラスターを持ってるのは俺ひとりがいい」 - ―ドライデン・ヴォスとトバイアス・ベケット[出典]
トバイアス・ベケットは好んで使う左の手でブラステック・インダストリーズ社製DG-29重ブラスター・ピストルを握り[15]、右手でRSKF-44重ブラスター・ピストルを使用した。[16] これらの武器は熱のせいで銃口付近が酸化していた。[1] ハン・ソロはミンバンでベケットのクルーと遭遇した際、彼らが携帯している武器が帝国軍の支給品と全く異なるため、本物の歩兵ではないのではないかと疑念を抱いた。またソロはベケットのブラスターを見て、帝国のライフルよりも使いやすそうだという印象を抱いた。[5] ベケットはヴァンドアでエンフィス・ネストと遭遇した際にDG-29とRSKF-44を失い、ケッセルやサヴァリーンでは別のブラスター・ピストルを使用していた。[2]
ベケットはブラスターの他に折りたたみ式ブレード/フュージョンカッターを所有しており[1]、ヴァンドアでコンヴェイエクスの屋根を切り開く際にこの道具を使用した。また<ファースト・ライト>に乗り込んだ時点でベケットの手持ちの武器はこれひとつになっていた。[2] ミンバンでATホーラーを確認する際、ベケットはマクロバイノキュラーを使用した。[5] またヴァンドアでは小型のファブリテック社製9.5Dエレクトロモノキュラーを使ってコンヴェイエクスを偵察し、帝国の保管施設へ積み荷を運ぶ線路に警備が甘い個所があること発見した。[1]
ベケットは黒いつなぎの上に茶色のコートを着込み[2]、型押し革の茶色いダブル・ガンベルトと、ティー=マス革のグローブを身に着けていた。[1] またミンバンの戦いに潜入した際には、コルソに調達させたぼろぼろの帝国軍の軍服を着ていた。[5] ベケットが着たのは防水の分厚い外套つきの将校用軍服であり、将校帽には野戦用ゴーグルが付属していたが、装甲が施されていなかった。また胸部のプレートは合成プラストイド製で、大尉の階級章が付属していたが、ベケットはこの記章が何を意味するのか理解していなかった。[1] またベケットはヴァンドアの作戦でもゴーグルをつけていた。[2] ケッセルではゴンダーの牙がついたマスクとタンテル・アーマーに身を包み、バイブロ=アックスで武装して、キーラの護衛に変装した。[5]
制作の舞台裏[]
- 「君たちがベケットの裏切りに驚いたかどうかは別として、そこにはテーマに沿った必然性がある。この瞬間は『新たなる希望』でハンがデス・スター攻撃のさなかに戻ってきてルークを救う瞬間と対照をなしている。両作品とも、年上で皮肉屋のキャラクターが仕方なく姿を消した後、突然戻ってくるという点では同じだ。ベケットの場合はそれが裏切りだったが、ハンの場合は英雄的な性格の表れだった」
- ―ジョン・カスダン、Twitterより翻訳[出典]
トバイアス・ベケットは2018年5月25日に公開されたスター・ウォーズ アンソロジー・シリーズ第2弾『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』で初登場を果たした。俳優はウディ・ハレルソン。[2] 当初スター・ウォーズ・ファンの間では、ハレルソンが新作映画で演じる役はギャリス・シュライク(レジェンズのキャラクターで、A・C・クリスピンの『ハン・ソロ三部作』に登場するハン・ソロの育て親)ではないかと噂されていた。しかしハレルソンはTV番組「ザ・トゥナイト・ショー スターリング・ジミー・ファロン」に出演した際に、自身の役名が“ベケット”であることを明かした。[17]
脚本家のローレンス・カスダンとジョン・カスダンによると、ベケットはロバート・ルイス・スティーヴンソンによる1883年の小説『宝島』に登場する悪役、のっぽのジョン・シルバーを基につくられたという。[18] またジョン・カスダンは、『ハン・ソロ』でベケットがソロを裏切るシーンについて、『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』でソロがヤヴィンの戦いのさなかに戦場に戻ってルーク・スカイウォーカーを救うシーンの“韻を踏んでいる”、と表現している。カスダンによれば、どちらの作品でも年上で皮肉屋のキャラクターが一度は去り、突如として戻ってくる点では同じだが、ベケットの場合は裏切りであるのに対し、ソロの場合は英雄的な性格の現れである。[19]
『ハン・ソロ』の製作段階で、ベケットのファースト・ネームはマティアス(Mattias)だった。『アート・オブ・ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』の初期の版でもこのファースト・ネームが使われているが[20]、アート・ブックが映画公開日の数カ月前に印刷されたためである。改訂版ではトバイアスに修正されている。[21]
登場作品[]
- Star Wars バトルフロント II (言及のみ)
- スター・ウォーズ:ベケット
- ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー (初登場)
- ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー 小説版
- ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー ジュニアノベル版
- ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー コミック版
- ベイダーの城の物語 3:イバラの魔女 (言及のみ) (回想シーン)
参考資料[]
- ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー オフィシャルガイド
- ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー:テールズ・フロム・ヴァンドア
- スター・ウォーズ ビジュアル・ディクショナリー新完全版
- スター・ウォーズ:エイリアン・アーカイブ
- スター・ウォーズ:銀河系の女性たち
- スター・ウォーズ:スマグラーズ・ガイド
- アルティメット・スター・ウォーズ 完全保存版大百科 ニュー・エディション
- スター・ウォーズ:イウォークに食べられない方法、銀河サバイバル・スキル (ビジュアルのみ)
- Star Wars THE GALACTIC EXPLORER’S GUIDE
- スター・ウォーズ:カード・トレーダー
- スター・ウォーズ タイムライン
- Tobias Beckett - 公式データバンク